et cetera

□待ち人
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新春の月峰神社は人であふれていて、毎年のように一緒にお参りをする知世ちゃんが見つけられるかちょっと不安だった。
待ち合わせ場所にもたくさんの人がいたけれど、振袖の着物を着た知世ちゃんはすぐに私のことを見つけて、小走りに駆け寄ってきてくれた。

「知世ちゃん。あけましておめでとう、今年もよろしくね。」
「あけましておめでとうございます。こちらこそよろしくお願いします」

お互いに深々とお辞儀して顔をあげる。

「さくらちゃんはお一人で来れられましたの?」
「ううん、お父さんとお兄ちゃんと雪兎さん3人で来たんだけど、みんなご用があるからってさっき帰ったの」
「まあ、お待たせしてすみません」
「そんなことないよ。お参り行こう」

少し鼻緒が窮屈に感じるぞうりを気にしながら本殿に向かった。

「さくらちゃん。今年のお着物はとてもお似合いになってますわ。」
「本当?お父さんがね、お母さんの着物手直ししてくれたの」

少し袖を広げて、なでしこの花をあしらった着物の袖を見せる。

「まあ、お母様の」
「うん、ずいぶん身長も伸びたからって」
「後でお写真撮らせてくださいね」
「と、知世ちゃん」

参道に並ぶ人たちの後ろに並び、ゆっくりとした足取りで前に進む。
賽銭箱の前につき、お賽銭を投げ入れるとゆっくりと手を合わせる。
去年と同じお願いを胸に抱きながら

−小狼くんに会えますように

香港の小狼くんからはクリスマスにカードが来ていた。
『Merry X'mas&HAPPY NEW YEAR』
香港に帰った年からもらうクリスマスカードには一足早い新年のあいさつが書いてあった。
日本以外の国ではクリスマスカードが年賀状代わりらしい。
だから同じようにカードを送った、ただ一言添えて

『会いたい』

少し長めのお願いをして顔を上げるとすでに向き直っていた知世ちゃんがじっとこちらを見ていた。目が会うととても優しい笑顔を向けてくれた。

「さくらちゃん。おみくじ引きましょう」
「うん」

お参りを終えて、そばにある売り場に足を進める。
カラカラと箱を振って、出てきた番号を巫女さんに渡す。
棒の代わりにもらった白い紙を見て最初に目に入ったのは「大吉」

「知世ちゃん。大吉だよ」

嬉しくなって智代ちゃんの袖を引く

「まあ。今年は何か良いことがありそうですわね。」
「うん」

白い紙に書かれている小さな文字を読んでいくと、なんだかうきうきとしてきた。
どれをとっても良いことが書かれている。
その中でも一番嬉しかったのは

『待ち人 必ずあらわる』

小さな紙を胸に当てて嬉しさをかみしめる。
本当に待ち人があらわれてくれることを願ってしまう。

「私は小吉でしたから、こちらにおいてゆきませんと」
「大吉は?」
「持ち帰ってお守りにすると良いそうですわ」
「ね、知世ちゃん。写真とって」

持っている携帯電話を知世ちゃんに渡して写真を撮ってもらう。

「李君にお送りになりますの?」
「うん、大吉だし見てもらいたくって」
「では、うんとかわいくお撮りしませんと」

肩脇におみくじを広げて写真を撮ってもらう。なんだか嬉しくって自然と笑ってしまう。

「メール今してもいい?」
「はい。私はあちらにおみくじを置いてまいります」

『新年明けましておめでとう。
知世ちゃんと一緒に初詣に来ました。おみくじ引いたら「大吉」
持って帰ってお守りにするよ。
今年は良い年になりそうです。』

−本当に待ち人あらわれたらいいな 

そう思いながら送信を押す。

待ち人があらわれるのはもう少し先、冷たい風が暖かくなる頃のお話
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