Short Story 2

□カウントダウン
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冷たい空気が火照った体を冷ましてくれる。
温かな布団と一緒で、心地よい人肌を確かめるために手を伸ばした。
柔らかな肌が指先に伝わってきて、少しにじんだ汗はどこかに消えてしまっていた。

枕元を照らすオレンジ色の光の中、さくらは綿にでもくるまれているかのように、布団に入り込んでいた。
いつもなら大きく開いている翡翠色の瞳は,布団の心地よさを確かめるかのように閉じられて、その気持ちよさに吸い込まれるかのようにまどろんでいるようだった。

同じように横たわっていたベットからそっと半身を起こして、サイドテーブルの上に置いた本を手にとると、パラパラとめくる。
何時間か前に読んだ場所まで行き着くと、記憶に残る文章の続きをたどった。

二人で過ごす金曜の夜。
そんな時間は久しぶりで、いつもなら家に帰る時間を気にしながら見る時計の針は、今日は二人だけの時間を刻んでいた。
明日は学校もなければ、そのほかの用事もない。
ゆっくりとした朝が迎えられる。

「小狼くんと二人で、年越しのカウントダウンしたいな」
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