Short Story 2

□いい夫婦
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「小狼くん、今日何の日か知ってる?」

学校への待ち合わせ、少しずつ冷たくなる風、吐く息は白くないものの冬の寒さがそこまで来ているような季節、さくらは小狼との待ち合わせ場所につくとそう切り出した。
一瞬何のことだろうかと思いながらも、さくらのニコニコとした笑顔を見て、つい10日ほど前のことを思い出した。
その日もさくらは同じような質問をして、答えられなかった小狼に得意げに「今日はポッキーの日」と教えた。
今日もきっと何かの語呂合わせなのだろうと察しはついたが、さて今日は何の日だったかというと返答に困る。
しばらく身動きもせずにさくらを見つめていた小狼だったが、正確な時間を知るために見ていたニュースで、アナウンサーが言っていてたことを思い出した。

「いい夫婦の日」

ぼそりと小狼が答えると、さくらは落胆の表情を浮かべた。

「えーー、知ってたの?小狼くん絶対に知らないと思ったのに」

いつもならいろんなことを知っているのは小狼で、教えられているだけのさくらは、先日同様に今日も小狼に知らないことを教えてあげられる予定だった。その予定は小狼の声で変更されてしまった。

「うーん。残念」

ほんの一瞬空緒仰ぐと、小狼の隣に並び足を進める。
「たまたまニュースでしていたからな。ポッキーの日といい、今日といい、日本人は語呂合わせが好きだな」
「そうかな、でも楽しいよ。来月には猫の日もあるしさ」
「猫の日?」
「2月22日 にゃんにゃんにゃんで猫の日…」
「へー」
「あっ、しまった。これも当日聞けばよかったのに」

小狼の隣を歩きながらさくらは表情をくるくると変える。
その様子に小狼の顔は自然とほころんでいた。
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