Short Story 2
□自転車に乗って
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「この季節の自転車寒いよね」
水色のジャケットに赤いネクタイ、細いフレームの自転車にまたがった高校生
冷ややかな風を切って、夕暮れの中を走り抜けて行った。
いつものように二人で帰っていたさくらは、冬の寒さを感じながら、吹き付ける風の冷たさを想像して呟いた。
「そうなのか?」
小狼は隣で気の毒そうな顔をするさくらをみながら、さくらが期待していたのとは、違う言葉を投げかけた。
「ほえ?」
「あ、いや自転車に乗った事がないから…」
「そうなの?」
「必要性がないし」
乗れるのが当たり前みたいなさくらの言葉に、ばつが悪そうにあさっての方向を見る。
香港での交通手段はもちろん車。日本に至っては、徒歩か電車で事が足りる。