Short Story 2

□さんかんしおん
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青空はどこまでも澄んでいるのに、歩へに当たる風はなぜか冷たい。
試験期間に入って、久しぶりに肩を並べて歩く通学路。
さくらのこころはもうすぐやって来る春のようなあたたかさで満ちていた。

「昨日は暖かかったのに」

二、三日続いた陽気のせいでしまってしまったマフラーが少し恋しくて、首をすくめる。
その様子に笑みを浮かべながら小狼は小さく呟いた。

「さんかんしおんだな」

その呟きはさくらには呪文みたいに聞こえて聞き直そうとしていたのに学校の玄関に着いていた。

同じ制服に身を包んで玄関に滑り込んでくる生徒たち、下駄箱のまえで繰り返す挨拶とたわいのない会話で、さくらの頭からは小狼がつぶやいた不思議な言葉は消えてしまった。
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