Short Story 1

□熱
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ドキドキ、ドキドキ

鼓動だけが聞こえてくる。

苦しい

優しく頭をなでてくれるのはだれ?


「起きたか」

ベットのすぐそばで声がした、よく知ってる声。
読んでいた本を閉じるとそばに置いた椅子から立ち上がって額に手を置く。
「まだ熱があるけど、ご飯食べれるか?」
見慣れた天井。
ここ、私の部屋。

「小狼くん?」
「なんだ?」

お部屋に帰ったのはなんとなく覚えているけど、それからどうやってベットに来たのか記憶がない。

「ご飯、取ってくるから。それ食べて、薬な」
「うん」

時計に目をやるとちょうど2時。
体を起こして周りを見回す
小狼くんに付き添われて帰ってきて着替えて
そのあと小狼くんが入ってきて
それから、それから・・・。

記憶がない。

でも、なんだか暖かくって、心地いいものに触れたような。
とっても安心できる鼓動を聞いたような。

思い出そうとしたらなんだか顔が真っ赤になってきた。

「さくら、入るぞ」
「う、うん」

盆の上に小さな土鍋とコップを乗せ小狼くんが入ってきた。コップの横にはしっかりと薬が置かれている。

「おかゆ作ったから、少しでいいから食べろよ。」

机の上にお盆を置くと、土鍋だけを持ってベットの上に腰を下ろす。

「あの、あの、私、どうやってお布団に入ったのかな?」
「ああ、俺が運んだ。」
「そのまえに、私なにかした?」
「何かって、いや別に・・・」

真っ赤な顔になって口ごもる小狼くん、私やっぱり何かしたんだ。
じんわりと目に涙が浮かんできた。きっと小狼くんが困ることしたんだ。

「ほら、何にも変なことしてないから、食べろ。」

おかゆの中の蓮華で一口分だけすくうと、一度自分の唇に当てて

「大丈夫熱くないから」

そういって口元に運んでくれた。
程よい暖かさのそれは、とてもおいしくて、お腹がすいてるかどうかもわからない胃袋に吸い込まれていった。
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