Short Story 1
□夕日〜sakura
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姿を見ただけでドキドキして、声を聞いたらもっとドキドキする。
こんな風に思っているのは私だけなのかな。
小狼くんの席は窓側の一番後ろ。
小学校のときと同じ位置、休み時間なのにその席に座って本を読んだりしてる、でもたまにはすぐ側の窓に寄りかかって友達と楽しそうにお話をしている。
授業移動の時には必ず通る小狼くんの教室の前。
そのときはいつも緊張する、今日は姿が見れるのかな、目が合うかなと一人で考えてしまう。
小狼くんに会えた日はきっと一日すごくいい日になる。
そんなことを思いながら通る廊下。
『まるで片思いみたいね』千春ちゃんはそんな私を見てそう言ったけれど、本当にそう思う。
私のほうが好きになりすぎているみたい。
会いたいの、毎日でも。
側にいたいよ、いつでもどんなときでも。
小狼くんが日本に帰って来てから募ってゆく気持ち、言ってしまえばきっと小狼くんは私のわがままに答えてくれると思う。
でも、日本に帰ったばかりできっと忙しいし、毎日姿を見れるだけで幸せ。
今までは声だけだったのだから。
「さくらちゃん」
「知世ちゃん、な、なに?」
「昨日母がこんなものを下さいましたの、さくらちゃんに差し上げますので、李くんと一緒に行ってください」
「でも」
「私はこれから、合唱コンクールに向けて土曜、日曜も練習があります、行く時間がないのでさくらちゃんにもらっていただけると嬉しいのですが」
そういって差し出されたのは、二枚のチケット。
招待券と書かれたそこには友枝遊園の文字。
「本当にいいのかな」
「はい」
にこやかに笑う知世ちゃん。きっと『小狼くんと二人で出かけてみたい』とつぶやいた私のことを心配してのことなのかもしれない。
「ありがとう、小狼くん誘って行くね」
私の言葉に幸せそうに微笑む知世ちゃん、いつも私のことを考えてくれる一番の親友。