Short Story 1

□夏だ!海だ!
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「うみ、海、海、海〜!」

蜂蜜色の髪を潮風になびかせながら、海に向かって走りこんでゆく。
毎年見られる光景だっのに、今年の夏は違っていて、いつもなら日差しに負けないぐらいの笑顔でいる少女は、困ったような顔を浮かべて、小さな室内の中にいた。

「ねえ、知世ちゃん。本当におかしくない?」
「はい、とてもかわいらしいですわ」
「でも」
「そうだよ、とっても可愛いよ?」

頭の横で髪を二つにくくった友達が、目の前で困り顔をしている女の子を勇気付けるように言う。

「そうそう、さくらちゃんその水着とっても似合ってるよ、ね、利佳ちゃん」
「そうね、さくらちゃんにあってると思うわ」
「でも、でも」

小さな胸の前でこぶしをギュッと握りしめて、自分の姿を見てみてみる。
胸を隠すようにある布はとても少なくて、一つ目はほんの少し胸の先を隠すためだけにあって、それに重ねるようにつけた薄いピンクの布は、同じ布で作られたフリルを胸元にあしらい、小さな胸を少しでも大きく見せるためギュッと締め付けられていた。
その布を支えるのは首元にある二本の紐。
そして、お尻を隠すようにある布も、胸元に負けないぐらい小さくて、とても心もとない。
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