Short Story 1

□ないしょの話
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それは何気ない一日が始まってすぐのこと。
HRを終えて一時間目の先生を待つ、そんなほんの一瞬の時間。
千春はすぐ隣の席に座る、少しだけ大人びた少女にこっそりと声をかけた。

「利佳ちゃん」
「なぁに、千春ちゃん」
「あのさ、さくらちゃんの首元って…」

小学生時代から仲良くしている友達の木之本桜、名前と同じでかわいらしい彼女。
誰にでも分け隔てなく接するその性格もあってか、学校での男子生徒からの人気は高い。
そんな彼女は自慢の友達で、何かあるといつも一緒にいた。
今朝、いつもよりも少しだけ遅めに登校した彼女。

「おはよう」

明るいあいさつを交わしながら、いつもと変わらないその笑顔を見ていて千春はふと気がついた。
昨日と違うその首元。
赤い痕がほんのりと色づいている。
見間違いかも、と思って再度その部分に目をやろうとするが、さくらは急いで自分の席へといってしまった。
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