Short Story 1

□秋〜深まる季節
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赤い夕日が差し込んでくるのは、たくさんの窓。
校舎の中を赤く染めながら一日の終わりを告げている。

その中でまたひとつ大きなため息が出て、さくらは両手に抱えた大きな本をギュッと抱きしめた。

−だめ、だめ、今日はまだ一日目。明日があるもん、きっと明日になったら・・・。

そんなことを思っても出るのはため息ばかり、吐息を振り払うように二、三度首を振ると、すぐ側の窓から見える校門に目をやった。
校門の前には、数人の生徒たちが誰かを待つように立っている。
その様子を見て、もう数え切れなくなったため息がまた一つ出た。

−こんなはずじゃなかったのに。

−こんなはずじゃなかった。

小狼は廊下を歩きながら、沈み行く夕日に目をやる。
オレンジのまぶしい光に思わず目を細めた。
そうしながらも、普段ならすることのないため息が一つ小狼の口から出た。
今日、朝からの出来事を思い返すと、この先が思いやられるようで、同じ思考がぐるぐると頭の中をかけてゆく。
『こんなはずじゃ』
何度目かの同じ言葉にいきついて、またでそうになる吐息をぐっと飲み込んだ。
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