Short Story 1
□「ぎゅ」っとね
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毎日早くなる夕暮れ。
傾いてゆく太陽が、長い長い影を作り出す。
− あっ
オレンジ色の光の中の長い影が、足元から少しだけ斜めに伸びていた。
ほんの一歩前に出ると、二つの頭だったその影が、ひとつに重なる。
ゆっくりとした足取りですすむ帰り道。街路樹の木々たちは茶色になった葉っぱを風に揺らしていた。
「何かいいことあった?」
隣を歩く小狼くんが不思議そうに聞いてきた。
「ほえ」
「いや、さっきからニコニコとしてるから」
「さくら、そんな顔してた?」
「…」
黙ってうなづいた小狼くんは笑っていて、そんなにおかしい顔してたのかなと思っちゃう。