Short Story 1

□手紙〜from sakura
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「どうしよう・・・。」

さくらは抜けるように青い空を見あげ、ポストに投函しようとした手をふと止めた。先日あった出来事が嬉しくてつい書いてしまった手紙。
受取人は香港にいる李小狼。AIRMAILと書かれた赤い文字を再度見つめさくらはため息をついた。書いて封をした後でどんどんと恥ずかしさが募ってきて、でも聞いてもらいたくて、電話じゃきっと伝えられなくて・・・。
(やっぱり、やめよう)
そう思い直し手紙を引き抜こうとした瞬間

「さくらちゃん、なにしてるの?」
「ほえーーー」

カタン

「あーーーーー!」

ポストの中に手紙は吸い込まれていった。

「さくらちゃん??」

声をかけてきたのは同じクラスの千春。
半泣き状態のさくらを千春は見つめ返して

「なにかいけないものいれたの?」
「うんん。違うんだけど。」
「早くしないと学校遅れちゃうよ。」

そういって先を急ぎだした。

「はい」

ローラブレードを滑らし走り出した。その間も恨めしそうにポストを振り返りながら。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

小狼くんお元気ですか?
 10月になってやっと秋らしくなってきました。運動会も終わって12月の学芸会への準備が始まりました。今からどんなことをするのかわくわくしています。
 先週知世ちゃんが新しいお洋服を作るのに体のサイズを測りに来てくれました。この頃ちょっとだけ身長が伸びました。といっても1センチほどだけど・・・。そのときに

「さくらちゃん、最近李くんとお話されています?」
「ほえ?」
 真正面にたってメジャーを巧みに使いながら体のサイズお測っていた知世ちゃんが、やさしい笑顔を浮かべながら聞いてきた。
 知世ちゃんの作ってくれるお洋服はいつも私にぴったり、少しの成長も逃さないようにといって月に一度はお家に身体のサイズを測りにいてくれる。クロウカードを封印し終えた今も「特別なときには特別なお洋服が必要ですから」と言っては素敵なお洋服を作ってくれている。
 
 8月のなでしこ祭が終わって2ヶ月、香港に帰った小狼くんから連絡をくれることは少なくて、それでも月に何度かは電話を掛け合っている。

「お話?うん、してるよ?先週もお電話したよ、ほんのちょっとだったけど・・・。」
「そうですか。」
「知世ちゃんそれがどうしたの?」
「いえ、何でもありませんの。」
「なーなー、知世いつまでかかるんや?はよせ
んと紅茶冷めてしまうど。」

お盆に置かれた紅茶とお菓子とにらめっこしていたケロちゃんが痺れを切らしたように言ってきた。

「すみません。もう少しですから。」

知世ちゃんは私の後ろに回りこみ肩や背中の長さを測る。そのときにメジャーから伝わる冷たさに肩をすくめる。空気が冷たくなってきたっ証拠かなと思っていると

「終わりましたわさくらちゃん。お洋服を着てくださいな」

と声をかけてくれた。
 やっと始まったお茶の時間、ケロちゃんは急いで知世ちゃんが作ってきてくれたモンブランを大きな口の中に入れていた。
 その様子にあきれながら少しさめてしまった紅茶をカップに注ぐ

「さくらちゃん。今週の土曜日なんですが、何かご用事ありますか?」
「土曜日?お夕飯の当番だけどそれ以外はご用ないよ?」
「そうですか、土曜日に私の母から買い物に誘われたのですが、残念なことにその日コーラス部の練習がありますの、せっかく時間を作ってくれた母に申し分けなくって、さくらちゃん私に代わってお買い物に行ってく下さいませんか?」

知世ちゃんのお母さんは私のお母さんのいとこ、お母さんのことが大好きだった人。私も大好きな人。いつも忙しくって知世ちゃんも会う機会が少ない

「うん。いいけど、わたしでいいのかな?」
「もちろんですわ!それでは土曜日の10時に

お迎えに伺うよう母に伝えておきますわ」

「じゃあ、待ってるね」
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