Short Story 1
□しぐさ
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いつも見ているなたのことを
いつもドキドキするちょっとした『しぐさ』
「ね、ね、さくらちゃん。さくらちゃんだったらどれ?」
クラスメイトが広げた雑誌の特集欄。
そこには男性のちょっとしたしぐさに関するランキングが書いてあった。
1位 ネクタイを緩める
2位 袖をまくる
3位 時計を見る
そのほかにも男性がするちょっとしたしぐさが並ぶ。
さくらはその記事を読みながら、想像してみた。
細く見えるが、実はしっかりとした腕にはめられた時計にさりげなく目をやる小狼。
しなやかな手を使って袖をまくり、白いシャツから鍛え上げられた腕を覗かせる小狼
いつも当然のように閉めている制服のネクタイを邪魔そうに緩める小狼。
想像するだけでそのひとつひとつにドキドキした。だから当然のようにさくらが出した答えは
「全部」
「全部??」
質問をした女の子だけでなく、どんな答えが出るのかわくわくしながら聞いていたクラスメイトたちからも同じような声が上がった。
「だって、どのしぐさもドキドキするよ?」
「いや、そうだけど・・・。さくらちゃんが一番ドキドキするのはどんなときなの」
「どんな・・・」
さくらは小狼のするしぐさを思い浮かべ、一人顔を赤らめた。
「いえないよ」
真っ赤な顔を両手で押さえ、はにゃーん状態になったさくらをクラスメイト全員が凝視する。
−いったいどんなしぐさを想像しているんだ!!
声にならない叫びが教室の中にこだましている様だった。
−やっぱり一番好きなのは、宝剣を手にした時小狼くん。でも、こんなこといえないよね。
宝剣を手にする小狼を思い浮かべるだけで、顔のほてりがさめることのないさくらだった。