Short Story 1

□うらない
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「小狼くん、占いに行こう!!」

ダン!と両手で机を押さえ、さくらにしては少し興奮気味の表情でそう告げると、帰り支度の途中であった小狼はとても不思議そうに目の前に立つ彼女を見つめた。

「占いって、さくらには必要ないだろ」

当たり前のように言うと、机の中から取り出した教科書を丁寧にカバンに入れてゆく。
冷ややかな対応の彼にさくらはことの詳細を語りだした。

今日の休み時間女の子たちで集まり、話題に上ったのは友枝商店街で噂になっている占い師。まだ若いその人が占うと、かなりの確立で当たるという。
そこで占ってもらったと友だちが自慢そうに見せたのは、つけると厄災から守ってくれるというブレスレット、小さな石のついたそれは普通に売っていれば数千円で買えそうな代物だったが、その占い師に進められ購入した値段を聞いてさくらは大きな目をさらに大きくして驚いた。

一万円

「それはちょっと高いな」

興奮気味に語るさくらの横で小狼は冷静につぶやいた。

「でしょ。それに、そのブレスレットからは何にも感じなかったの・・・。」

本当に護符の役割をするものなら、魔力のある自分にもわかるはずだと何度もそこから力を感じようとしたが、まったく感じられずひどく戸惑った。
嬉しそうに見せる友達に、何の力も持たないものだと告げるわけにもいかず、もしかすると自分の感じられないほどの強い力で守られた護符なのかもと思ったり、いろんなことを考えた。
でも答えは見つからず、これはこういうことの専門家と一緒に事実を確かめに行くのが早い!と思って、専門家李小狼とその占い師をたずねることにしたのだ。

「ブレスレットに一万円。出す子がいるんだな」
「うん。でも、ずいぶん無理したみたい。一緒に行っていた子に借りたりして。」
「そうまでして?」
「うん。」

だからちゃんとしたものなのか確かめたかったのだとさくらは言った。

お店の前には長い行列ができていて、その占い師に見てもらうには、夕方を通り越しそうな勢いだった。

「どうするんだ?」

小狼は兄である桃矢からきつく言われている門限を守ることができなさそうであることをさくらに確認する。
 思案顔の彼女は路地裏に身を隠すと、カードを発動させ同じ顔をした自分に家に帰るお願いをした。

「ミラーさんにお願いしちゃった。」
「今回だけだからな」

友達のことを思うさくらが門限を守らずここに残るのは予想ができたし、こういうことは早く対処するほうが良いだろう。
いつもなら引張ってでも家に連れてゆくのだが、今回は門限破りの片棒を担ぐことにしようと小狼はため息混じりに思った。

さくらたちの順番が来たのは夜といって良いほどの時間だった。

「どうぞ」

と促され入った小部屋の中にはそれらしく大きな水晶球がテーブルの上に置かれ、占い師の女の人は、黒い服に身を包んで座っていた。
まだ若い彼女の前にさくらと小狼は並んで座った。

「では、ここに名前と生年月日、占ってほしいことを書いてください」

差し出された白い紙に向かってさくらは筆を走らせた。
一瞬手を止め小狼のほうを見てほほを染めるとそっとその紙を彼女に手渡した。
その白い紙に目をやると、カードの束を取り出し占いを始めた。
何列かに並んだカードを返しながら、彼女の表情が硬くなってゆく。

「今までたくさんの困難を二人で乗り越えてこられたようですね。今は落ち着いているようですが、すぐそこに大きな壁が待ち受けています。そのことによって、二人に別れが訪れるかも知れません。それが乗り越えられるかどうかはあなた次第と出ています」

その声にさくらは少し体をこわばらせた。『たくさんの困難』『大きな壁』思い当たることがないわけではない。
当たると評判の占い師から言われると本当に思えてくる。

「そんな困難を避けるためにも、ぜひこれをお付けなさい。そうすればすべての厄災からあなたを守ってくれます。」

机の上に出されたのは、友達がつけていたのと同じブレスレット。
さくらには何の力も感じられない。
食い入るようにブレスレットを眺めていたさくらの腕をつかむと小狼は立ち上がった。

「困難は超えるためにあるもので、避けるものではない。ましてや物に頼って避けられる災いなら自分の手で何とかする。」

占い師が何か言葉を発するより早く身を翻し二人は表に出た。

「小狼くん」

少し引きずられるような形で店の外に出たさくらは、憤りを隠しきれない顔をしたしゃおらんの名前を呼んだ。
店から少し離れた路地。そこで大きなため息をつくと立ち止まり。さくらのほうをじっと見た。

「あんまり変なこと占ってもらうなよ」
「ごめんね。」

白い紙に書いたのは「彼との未来」

「でも、どうだった?」
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