Short Story 1

□朝
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冷たい朝の空気が肌を突き刺すよう。
ベットの中から手を伸ばし、枕もとの時計を手に取った。
時間は5時・・・。
−いつもならこんな時間に目がさめることなんかないのに
部活の朝練習があるとしても、起きるには早すぎだ。
時計を元の場所に戻して、もう一回寝ようともぞもぞと布団の中にもぐりこもうとして、その動きを止めた。

「小狼くん?」

かすかに小狼の魔力を感じて、布団から抜け出ると、窓の前に立った。
小狼の気配はずいぶんと遠くのほうからしている。
−月峰神社のほうだ
足先に刺すような冷たさを感じてもう一度布団に帰ろうとも思ったが、もう一度窓の外に目をやり少し考えた。
−こんな日ってあんまりないし。やっぱり起きよう。
急いで制服を着てかばんを持つと台所に向かう。テープルの上にぽつんと置かれたひとつのお皿に目を留めて、ちょっと首をかしげた。
『朝バイトになった』
書きなぐりのメモが置いてあって、その上には朝食用におにぎりと少しのおかずが置いてあった。お父さんは今日は学会に行っていて留守。

一人で食べる朝食は味気がなくて、一人しかいない家はいつもより広く感じる。
作ってくれたおにぎりとおかずを胃袋におさめて、お皿の片づけをすますと写真のお母さんにだけ声をかけて、家を出た。

コートの隙間から吹き込んでくる風は冷たく、冬の寒さを強く感じさせる。
後数ヶ月すれば春が来るというのに・・・。
マフラーの中に顔をうずめながら、月峰神社にその足を向けていた。
ちょっとづつ強くなる気配と早くなる足。
神社の前についた頃には体が少し温まっていた。
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