Short Story 1

□新年
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その日月城家の一角は、異常な緊張感に包まれていた。

正方形のコタツを囲んで向かい合う4人
家主 月城雪兎、木之本桃矢、木之本桜、李小狼。
目の前には小さな四角いもの。

「次、桃矢の番だよ」
「ああ」

目の前につまれた牌をつかむとゆっくりと自分の前に並べられた牌の横に置く。
牌の文字を見ながら、表情変えずその中のひとつをつまみ上げ、同じような模様の並んだ場所に置いた。

麻雀。

中国由来のこのゲームを4人が始めたのは、ちょっとした偶然だった。

新春のお参りを終えた帰り道、小狼といっしょに家へと向かっていたさくらは、帰り道の途中にある雪兎のところにあいさつに行こうと言い出した。そのまま二人で雪兎のところにあいさつに来たのだが、

「いいところに来たね」

という雪兎に家の中に迎え入れられ、そのままコタツの前で牌を並べていた桃矢といっしょに4人で麻雀をすることになった。
小狼は言うに及ばず、さくらもなぜか麻雀のルールを知っていたので、何も問題はないはずだった。

そう、しばらくの間は・・・・。

進むにつれ小狼と桃矢の捨て牌の様子がおかしなものになってきていた、よく見ると役ができるだろう牌が続々と並ぶ・・・。

表情を変えることなく進める二人だが、その視線の先にはさくらがあった。
さくらは牌を取るたび、他の人が牌を捨てるたびにその表情を変え、喜んだり、悔しがったり、見ていればどんな上がりを考えているのか想像ができそうなほど・・・。

小狼は取った牌を眺め手を止めた。そしてさくらのほうを見るとわくわくしながら捨て牌を待つさくらの姿。

ーきっと、これがさくらのあがり牌。だけど、今の親は自分。そして兄貴との点差はない・・・。

さくらには勝たせてやりたいが、さくらの兄に負けるのは.
そう思い、並ぶ牌の中からこの場面に差しさわりのないものを選び置く。目の前に座る桃矢の視線が痛いほどに突き刺さる。
残念そうなさくらの顔を見てほっと息をつきながらもその緊張感は続いていた。
残りわずかな牌。
このままなにごともなく進めば流れえるだろうこの勝負。
桃矢と小狼の緊張感は高まるばかりだった。
−こいつには負けたくはないが、さくらに勝つのは・・・

お互いの熱い視線がぶつかり合う。

「あっ、僕あがり」

その場の空気が読めていないない雪兎の一言によって勝敗は決まってしまった。

「えーと、李くんが親だから・・・」

のんきに点数配分を読み上げる雪兎の横ではさらにヒートアップした二人が視線をぶつけ合う。

『今度こそさくらに花を持たせ、こいつに勝つ!』

こうして月城家の麻雀大会はさらに熱を帯び、夕暮れを過ぎても続いたそうな。
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