Short Story 1

□夕日 〜syaoran
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笑顔を残したさくらの後ろ姿を見送って振り返ると、クラスはざわめきに包まれていた。

「なんで、木之本さんと李が親しいんだ」
「それに、木之本さんに気軽に触れて、いったいどうなっている」

そんな質問が途切れることなく浴びせられ、返答に困る。
転入してから知った事実。
『木之本桜は校内一かわいい』
小学校時代からその可愛さは磨かれ、その昔大道寺知世が言った『さくらちゃんをお好きな方はたくさんいらっしゃいますから」と言う言葉のたくさんは数を増し、今や誰もが認める学校一番の女の子になっていた。そんなさくらと転校したての俺が親しく会話をする姿は今日が初めてで、そんな姿を目にするクラスの連中が驚いたのも当然かもしれない。クラスが離れているとはいえ、きっとこの中にも「木之本桜」が好きな人間はいるに違いないのだから。
俺が弱り果てていると質問の嵐を遮るように割って入ったのは、いつもなら見えているかどうかわからない目を開いた、山崎だった。

「まぁ、まぁ。僕が代表して質問しよう。」

いつもとは違う山崎の様子に、クラス中が息を飲んだ。俺もどんな質問が飛び出してくるのかと身構える。

「で、木之本さんとはもうキスぐらいはしたの?」

その質問は戸惑いを浮かべていた俺を硬直させ、さらに身体中を沸騰させた。

「山崎、そうじゃないだろ。知りたいのは…。」

つぶやくような言葉がクラス中から湧き出す。

「だって、そいう言う関係なんだから。ね、李くん」

その姿に山崎は腕を組み大きく頷くと俺に向けた言葉を続ける。

「そうか、まだなんだね。だめだよ、香港から来てもう一ヶ月だろ?」
「だから」
「そうだよね、あんなに無邪気な顔をされたら手を出せないよね」
「いや」

全身を赤くしながら一人で話を進める山崎に合いの手を入れるのがやっとで、水を打ったように静かな教室の居心地の悪さにその場から逃げ出したくなった。
タイミングよくチャイムが鳴りしぶしぶと席の戻る生徒たちを見てほっと胸をなでおろす。
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