Short Story 1
□手紙〜from sakura
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土曜日の10時 ピンポーン とチャイムとともに知世ちゃんのお母さんはやって来た。
「はーい」
カバンを手にして玄関を開けると思いっきり抱きつかれた。
「おはようさくらちゃん!!今日もかわいいわ」
「ほえーー」
「さ、さ、買い物に行きましょう」
背中を押されるように道路に止めてあった黒い大きな車の座席に座らされた。
「行ってちょうだい」
行き先がわかっているのか運転手さんはゆっくりと車を走らせた。
「あの、あの、今日のお買い物ってどんなものなんですか?私が一緒でも大丈夫なんでしょうか。」
隣に座ってニコニコとしている知世ちゃんのお母さんは「楽しいところよ」といって笑っている。
(知世ちゃんにどんなお買い物をするのか聞いておけばよかったな。)
そう思って窓の外を見るとそこはとってもよく見た景色。いつも通る友枝商店街が見えていた。商店街の入り口で車が止まる。
「さ、着いたわよ。」
楽しそうに私の手をひいて降りていく。
ぐいぐいと手を引かれてたどり着いたのは商店街の中にある下着屋さん。子供から大人まで女の子向けの物を扱っているところ。一階と二階があって一階には子供向けに下着のほかにハンカチや、ちょっとした小物を扱っている。それとは別に二階には大人向けのもの。私が利用するのは一階だけだけ。
(こんなところで何買うんだろう?)
「さ、行くわよ。」
来た時と同じようにぐいぐいと引っ張られ店内に。二階に続く階段を上っていった。
今まで何回も来たお店だけれど二階に行くのは初めて・・・。
上りきったところにあったのは、色とりどりのレースやリボン。
一階とは違う大人の香りがした・・・。
「いやー!かわいい!!。」
知世ちゃんのお母さんはそういうや否や、飾られていた下着たちを手に取り私の前にかざす。
「これもいいわね。これも、でもこっちのほうが似合うかしら。」
手には下着の山が築かれていった。状況をつかみいれていない私は呆然と立ち尽くすばかり・・・。
「すみませーん。試着のお手伝いお願いできますか?。」
その声と店内にあった試着室に押し込もうとする背中の手はほぼ同時で
「ほえーーー」
あっという間に試着室に押し込まれさらに後から来た店員のお姉さんにカーテンを占められ、ここから逃げ出すこともできない状態。
「ここは、初めてかな?」
ふんわりと甘い香りのするお姉さんが微笑みながら尋ねてくれた。
「は、はい。」
スカートを握り締めて小さな声で答えた。
「じゃあまず、サイズ測らせてくれるかな?」
ポケットから取り出したメジャーを顔の前にかざしてにっこり。
「上の服脱いでね。」
お姉さんに促されるまま服を脱いで胸のサイズを測ってもらう。
「さすがお母さんね、サイズ合っているわ。付け方はね」
(お母さんじゃないんです・・・)
そう言おうとしたけれど、説明してくれるのをさえぎることもできず、手渡されたブラジャーをお姉さんのいう通りにつけてみる。
つけてみると心なし窮屈な感じもしたけれど、なんだか少しだけ胸が大きく見えた。
「さくらちゃん、どお?」
カーテンの隙間から顔をのぞかせて、ニコニコしながら胸元を見られた。
「かわいいー!やっぱりピンク色にあうわーー」
「本当にお似合いですよ」
「でしょ、でしょ。つぎは、これと、これと。」
次々に試着室に持ち込まれた物を付けてははずしを繰り返す。
最後には何がいいのやらわからないうちに会計まで終わり、手元には紙袋に入った何着もの下着たち。