Short Story 1

□声を聞かせて
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夏休みが終わり、新学期が始まると待っていたのはテスト・・・。

勉強をサボっているつもりはないのだが、返ってきた答案用紙には丸以外のものが目立っていた。

「うー。数学ってわかんないよう。」

苦手な数学の答案用紙はほかの教科に比べて2,3割悪い点数だった。

(数字の組み合わせだけで答えができたらいいのに。)

図形の問題や、覚えきれない公式、二学期になってさらに難しさをましていた。
小学校と同じように隣の席にいる知世のほうに問題用紙を見せた。間違えた部分を挿しながら教えを請う。

「知世ちゃん。どうしてここの問題の答えが違うの?」
「そうですわね・・・。」

しばらく眺めていてから、使う公式を間違っていると指摘された。

「公式をちゃんと覚えれば大丈夫ですわ。」
「大丈夫。なのかなー」

中学生になってから数学は本当に理解しがたいものになっていた。できた!と思っても、実は間違っていることが多い。

「さくらちゃんはできない問題もちゃんと勉強なさいますから、いつかご自分の力になりますわ。」

知世ちゃんはお勉強を教えてくれた後はいつもこういって元気付けてくれる。

「木之本さん」
「ほえ?」

テスト用紙を直していると、クラスのお友達から声をかけられた。

「なにー?」

そばに行くと、違うクラスの男の子が立っていた。

「木之本さん話があるんだ、放課後中庭に来て。」

早口でそういうと、くるっと身を翻して足早に立ち去った。

「放課後は、ご用が・・・」
「木之本さん、最近呼び出し多いね」

言いかけた言葉は彼には届かずに最後は口の中で消えた。
さっき声をかけてくれた子は出入り口に近い席にいるせいなのか、よく取次ぎを頼まれている。

「そ、そんなことないよ」

少し照れくさくなって、赤くなった顔を何回か振って席に戻った。

「どうされましたの?」
「放課後、中庭に来てほしいって、何だろうね」

知世ちゃんにそう言って、答えの見えかけた問題に再度取り組む。

「今日の放課後は、私ご一緒できませんわ」
「えっ、いいよ!一人で大丈夫」

いつも男の子からの呼び出しには知世ちゃんが付いてきてくれる
『李君のいない間、さくらちゃんをお守りするのは、私の役目ですから。』
そう言って、「ごめんなさい」を言った後の私を慰めてくれる。

「これからはイベントが続きますから、さくらちゃんに思いを告白する方も多くなりますわね。」
「知世ちゃん」

10月文化祭、12月にクリスマス・・・。確かにイベントが続くかも
本当は、そんなイベントは小狼くんと一緒に楽しみたい。
でも彼はいまだに香港の空の下だ。


放課後、中庭に行くとすでにその男の子は来ていて

「木之本さん、好きなんだ。付き合ってほしい」

すごく赤い顔をして言ってくれた。でも、答えは決まっている。

「ごめんなさい。好きな人がいるから」

頭を下げると、その子の足元が見えた。どんな顔をしているのかは伺えない。
ゆっくりと顔を上げると、そのこはうつむいてつぶやくように言った。

「知ってる。でも、その彼は遠くにいるって聞いた。そいつだって、きっと今の場所で好きな子ができてる。だから・・・」

一歩そばに近づくと、強い力で肩をつかまれた。

「いや!」

反射的に出た言葉

バシッ

音と一緒に肩の手が弾け飛んだ。

「っ」
「ご、ごめんなさい」

それだけ言ってその場を離れた、少し行ったところで振り返ると、手を抱えてうずくまる姿が目に入る。
突然つかまれた手が怖くて発動してしまった『シールド』のカード
いつもならこんなことないのに。

『きっと今の場所で好きな子ができてる』

その言葉が強く心に突き刺さった。
(そんなこと、絶対ないもん)
自分に言い聞かせるように何度も何度も繰り返した。



→続く
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