Short Story 1
□うらない
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「さくらはどう思ったんだ?」
「ん。ブレスレットには何も感じなかったけど、使っていたカードは・・・。」
「嫌な感じがした?」
「・・・」
自分が言おうとしていたことを先に言われ大きく目を開く。
「俺もそう思った」
カードにまとわりつくようにあった気配は、暗く、濁っていて、ひどく不快なものだった。
小狼は思案顔で、少し不安げなさくらを見つめた。
多分このままにしておくと、占い師本人に良くないことが起こる可能性がある。
そんなことを考えながら立ち尽くしていいると、不意に声をかける人物がいた。
「そのこのお二人、寄って行きなさい。」
ずいぶん年配のその占い師は、机との前にゆったり構え、さくらたち二人を手招きした。
慣れた手つきで自分の手の中にあるカードをかき混ぜる。
「きれいな赤い色・・・。」
その占い師の手元から発せられる魔力の気配は力強く暖かさを感じさせるもの。
自分でも気づかないうちにつぶやいた言葉にはっとして、小狼の顔を見た。
「お嬢さんのカードは綺麗な桜色だね。」
手を止めることなくそういうと、決められた位置にカードを置いていった。
さくらはカバンをぎゅっと抱きしめて、その様子を見守っていた。
次々めくられてゆくカードの意味はさくらにはわからなかったが、なんだかさっきまでの嫌な感じが洗い流されてゆくように思えていた。
「うんうん、二人でがんばってきったんだね。これからもいろいろとあるだろうががんばりなさい。特に君はいろいろと一人で抱え込みすぎているようだよ。もう少し他人を信用しなさい。そうすれば開かれる道もある。」
静かに二人に語りかけるような言葉は胸の中に吸い込まれ、大きな力になるようだった。
「あの子も昔は綺麗な色のカードを持っていたんだけどね。」
カードを重ねながら、遠い昔を懐かしむようにつぶやいた。
「もう、運命は変えられない。変えようとしても無駄だよ」
小狼の顔を見ながら言ったその一言は、小狼の心に暗い影を落とした。
「気に病むことはない。彼女自身が選んだのだから」
カードの告げる言葉を聞けなく、いや聴かなくなってしまった彼女は、カードたちの悲鳴が聞こえない。淀んでゆく力。それは使っている人物に影響を及ぼすだろう。