Short Story 1

□朝
3ページ/4ページ

突然朝の訓練にやってきて、ファイトのカードまで使うさくらに少し困ったけれど、怒ってはいないというように
カバンの中から取り出したタオルで汗を拭きながら小狼はさくらのほうを見る
少し見上げる格好でその顔を覗き込みながら、今朝一番に顔を見れたことが嬉しくて、自然と笑みが浮かんできていた。

「おはよう、小狼くん」
「おはよう。ありがとう良い練習になったよ」
「よかった」

自分のしたことが少しでも小狼の役に立てたのなら大満足だ。
小狼はタオルを首にかけながらさくらの頭の上にぽんと手を置いた。

「さくらにしては、朝早いけれど今日どこかのクラブの試合でもあるのか?」
「ほえ?そんなのないよ。普通の朝練だけ」
「朝練習って。今日土曜日だろ」
「あああーーーーーーーーー」

静かな朝の境内にさくらの声が響き渡る。
その声が合図のように羽を休めていた鳥たちがが羽ばたきだす。

「忘れてた。」
「だろうな、カバンまで持ってたからおかしいと思ったんだ」

土曜日にも練習はあるが、それは9時からお昼までで、どちらにしてもこんなに朝早く学校に行っても誰もいるはずがない。

「どうしよう。」
「家でお茶でも飲んでから行くか?」
「いいの?」
「帰って朝食食べるし、その様子だとさくらは食べただろ?」

すばやく置いていたコートを羽織ると思案顔のさくらに声をかけた。片方の腕にバックをかけると帰る準備は出来上がった。
一瞬目を閉じ印を結ぶとさっきまであふれていた小狼の気配がなくなる。

「行こう」

差し出された左の手にそっと自分の手を載せると、小狼のマンションまでの道を二人で歩いた
柔らかな日の光に照らされ二つの影はそっと寄り添う

おわり
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ