CP小説

□scarlet maple tree
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忘れはしない

たとえ、何十年経っても

僕だけが君を想う









「あ、かえでだよ!左馬介!」
「かえで!?」

思わず周りを見渡した。

いないことは分かっている。分かっているはずだが、その姿を求める。

「かえで…!」
「楓なら、そこにあるじゃないか」

阿児が不思議そうな顔をして、1本の樹を指さした。

「あ…」

そこでは、真っ赤な楓が風に揺れていた。

「…綺麗だね」

阿児は阿児なりに汲み取ってくれたのか、控え目に呟いた。

気を使ってくれた阿児に何か言葉を返そうとしたが、言葉が出ない。

俺の目の前には、真っ赤な楓が無いからだ。
俺の目の前には、腹から血を出したかえでがいるからだ。

―せっかく会えたのにね―

俺を庇って矢を受けたかえでは、腹から血を出しながら顔を白くして笑ってた。



守れなかった

大切な君を守れなかった



「左馬介……大丈夫?」
「あぁ、悪い。行くか」

真っ赤な楓を後ろに、俺たちはまた歩き出した。



ザワ…

風が吹いて、楓の赤い葉が揺れた。

そのとき、楓の樹の下に橙色の忍の装束を着た女性が現れた。
彼女は左馬介のほうを見て微笑んだ。

左馬介は何かを感じて、後ろを振り返った。
しかし、そこには誰もいなかった。

ただ、楓が揺れているだけだった。










忘れはしない

何十年経っても

僕だけが君を想ってる



fin

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