CP小説

□君だけの感情
2ページ/3ページ

ミミは適当な空き教室に入って、机に突っ伏した。
自分の教室に行かなかったのは、ささやかな抵抗だった。

光子郎に探してほしい

でも、簡単に見つけられるのはなんか癪に触る

“愛を試している”と言えば聞こえはいいけど

「めんどくさい女って思われるかな…」

それでもここを動く気は起きず、見知らぬ教室で光子郎を待っていた。

窓の外の空は綺麗なオレンジ色で、あまりの綺麗さにミミは恨めしくなった。

「光子郎くんのばーか」

ただ呟いただけの言葉。

嘘でもなく本当でもない言葉。

しかし、呟いた直後に携帯電話から着メロが流れギクッとした。
ディスプレイにはさっき「ばか」と言ったあの人の名前。

見つけてほしい
でも、簡単に見つけないで

「………」

ミミは鳴り続ける携帯電話をじっと見ているだけだった。
着メロが3周目に入るころ、携帯電話は鳴り止んだ。


着メロが鳴り止むと、ミミは急に不安になった。

光子郎は諦めて帰ってしまっただろうか

光子郎は愛想をつかして帰ってしまっただろうか

光子郎を探そうとも思ったが、またあの“めんどくさい女”の思考が邪魔をする。

「もう、いやだ」

どうしたらいいの

「ミミさんっ」

声がしたほうには、息を整えている光子郎がいた。

「こうっ…」

思わず嬉しそうな声が出たが、すぐに口をつぐんだ。

「すみません、ミミさん。長らく待たせてしまって」

ミミが見つかって安心したのか、光子郎は笑顔を見せた。

その笑顔が

ミミは光子郎に抱きついた。

「ミ、ミミさんっ?」
「ごめんなさい〜〜〜」
「何がですか!?」

その笑顔を見たら、許してあげようと思った
その笑顔を見たら、謝りたくなった

その笑顔だけで、めんどくさい女からいつもの私に戻れた

なんて単純なのだろう

でも、きっと

「光子郎くんだけだもん」


fin
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ