短編

□認める気持ちは認めたくない心
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やめろ
やめろ
やめろ

「ふふっ、かわいい」

目の前の男は恍惚とした表情を浮かべていた。
その表情を見るのがイヤで下を向いた。

アイツはそれが気に入らないようで、俺の髪を引っ張り無理矢理に上を向かせる。
俺と目が合うと、またあの表情を見せた。

「かーわいい」

ニッコリ笑うと、俺の口の中に舌を入れてきた。
アイツに殴られ蹴られた体では抵抗することもできず、舌の侵入を許してしまう。

ピチャピチャと脳内にやらしい音が響く。

やめろ
やめろ
やめろ……?

アイツは唇を離すと、俺の口からこぼれた唾液を舐め取った。

「あぁ、その表情もいいね。気分はどう?」
「……さ、いあく」
「ほんとにー?」

アイツはクスクス笑いながら、今度は頬を舐める。
しょっぱいね、とアイツが呟いたから、いつの間にか泣いていたんだろう。

「ホントにイヤ?」

今度は、俺の体に手を這わせながらキスをしてきた。
その手つきに、体が、

「ぅあ…」
「感じてんじゃん」

嘘つきぃ、と笑いながらアイツはいやらしい手つきで、俺の体を触り続ける。

「やっ」

やめろ
やめろ
やめないで

「くっ」

今度は自分が泣いているのを自覚した。

頬にこぼれる涙の感触がある。
泣いてる理由も分かる。

「大好きだよ」


涙が、止まらない


fin
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