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□思い出すは貴女の笑み
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貴女に初めて会ったのは何時だったか。
そうだ。
母上と共に叔母の所へ行った時だ。
「綺麗な顔ね。名前は?」
姫様は大人びた口調で私に問いた。
綺麗な顔、と言われることは嬉しくなく不快に感じるが、何故かこの時は何も感じなかった。
「明智十兵衛光秀。姫様の従兄弟にあたる者です。」
姫様の顔が固まった気がする。
「ごめんなさい!私、殿方に向かって『綺麗』だなんて。ごめんなさい!!」
「いえ、気にしていません。」
「そう…。」
それでもどこか納得できないようで、姫様は困ったような顔をしていた。
そちらのほうが歳相応な気がした。
「怒っていません?」
「ええ。慣れてますし…。何故、その様なことをお聞きになるのですか?」
「光秀様が、怒ったようなお顔をされていたので…」
どう表現したらいいのか分からない感情が私の中でぐるぐる回っていて、口調は単調であったし顔も強張っていたのだろう。
「…緊張してるんですよ。」
しかし、その感情がなんなのか分からなくて『緊張』だということにした。
「緊張なさらなくてもいいのに。
歳もそんなに変わらないみたいですし。」
姫様はまた大人びた笑みを浮べた。
そして、またその笑顔に見とれる。
「歳も近いんですし、『姫様』なんて堅苦しい呼び方しなくてもいいですよ。」
「いえ、お心遣いは嬉しいですが、身分はわきまえなければなりませんから。」
「ふふ。真面目な方ね。」
私は、ただただ、わけの分からない感情に翻弄されるだけだった。
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