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□愛の矢文とカラクリの謎〜廃安土城の裏側〜
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城の屋根に人影が見える。
しかも、その人は屋根に吊されているようだ。
普通ならば、誰かに驚かれる光景だろうが、驚く人はここにいない。
なぜなら、この城はもはや廃城であったからだ。
この廃城の名は『安土城』。
かつて、鬼武者と幻魔王が死闘を繰り広げた場所である。
そして、そんな城の屋根に吊されているのは、右目が赤い少女だった。
少女は全く動かず、ただ宙を睨んでいた。
少女の元に、墨と筆と大量の紙を持った男が現れた。
「いい子にしてたか、茜?」
少女――茜は男を睨んだ。
「さっさと俺を殺せよ。俺を生かしてどうする気だ」
男は狂気めいたように口許を歪めて笑った。
「お前を使って秀康殿を誘い込むんだよ。で、のこのこやって来た秀康殿を、この宗矩様が殺すんだよ」
茜は悔しそうに唇を噛んだ。
助けてほしくない、と言えば嘘になる。
しかし、自分なんかのために、仲間を危険な目に合わせたくない。
大好きな人だから、尚更。
茜は、蒼兄ィ、と小さく呟き俯いた。
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