CP小説

□heat
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熱を出すと誰かに甘たくなる、という話を聞いたことがある
しかし、眼前にいる人はそんな雰囲気を微塵も出さない

「なんだ元親。私を見てる暇があるなら、仕事でもしてきたらどうだ」

布団で寝ているギン千代は常と変わらぬ口調で言った。

「恋人の心配もさせてもらえないのか、俺は」

その横に座り、ギン千代の様子を見ていた元親は不満げに言った。

「心配だけなら、仕事をしていてもできるだろ」

だから早く出て行け、とギン千代は目で促す。

「お前は俺を部屋から追い出したいのか?」
「そうだ」

半ば冗談で言ったのに、即答されてしまい、元親は軽いショックを受けた。

「何故だ?」

元親に問われ、ギン千代は目線を逸らした。

「…元親に、うつるから」

いつもの凛々しい声ではなく、女の子らしい声でギン千代は答えた。

元親は寸の間 驚いたが、すぐに顔を和らげた。

「上等。お前の風邪ならうつってもかまわない」

元親はギン千代の頭を、愛しそうに撫でた。
対して、ギン千代は眉を顰めた。

「お前が風邪をひいても、私は看病しないぞ」

ギン千代がジロリと元親を見ると、元親の笑みは消えた。

「…寂しいことを言うな」

すると、ギン千代はすっと手を出した。

「なんだ?」
「どうせここにいるんだろ?手 握っててくれないか…」

顔が赤いのは熱のせいか、それとも…

「上等」

元親はその手を握った。


fin
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