短編

□君が大事
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授業終了のチャイムがなり、みんなが友達と弁当を食べる準備をし始める。

高倉はさり気なく教室を出て、ある場所へ向かった。





「紅耶(コウヤ)」

この階段を使うと確実に逃げ遅れる場所にある役立たずな階段に腰掛けている藤村紅耶に声をかけた。

「なに?夏輝(ナツキ)」

紅耶は高倉夏輝の姿を確認すると、弁当を広げ始めた。

夏輝も紅耶の隣に座って、弁当を広げ始めた。

「なぁ紅耶、友達つくりなよ」

紅耶は訝しげな視線を夏輝に向けた。

「なんで?」
「なんで、って…。一人じゃ寂しくない?」
「夏輝がいればいい」

紅耶はキッパリと答えると無言で弁当を食べる。

キッパリと言われると後に続く言葉がなく、尚輝もまた無言で弁当に手を出した。

沈黙が少し続いたが、紅耶が口を開いた。

「夏輝は、僕がいなくてもいいわけ?」
「え?」
「夏輝は、僕以外の子と仲良くやってるじゃん。僕がいなくたっていいんだ」
「…そんなわけない。今だって、一緒に弁当食べてるし」
「お昼以外は一緒にいないじゃん。夏輝、いつだって伊橋とか平賀とか原とかと一緒にいるし…。僕と一緒にいたくないの!?」

急に声を荒げた紅耶に夏輝は驚いた。

「僕と一緒にいたくないの!?」



そういうわけじゃない…。
そういうわけじゃないんだよ、紅耶。



でも、言うのをためらって夏輝はなかなか言葉を紡げない。

「もう行く…」

いつもは昼休みが終わるまで一緒にいるのだが、紅耶はその場で離れた。

「紅耶…」

そっとしておいたほうがいいだろう、そう判断した夏輝は紅耶を追わなかった。





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