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□思い出すは貴女の笑み
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それから、私は度々 姫様の元へ行った。

何度か行くうちに、お互い打ち解けていった。

父上は特に止めることもなかった。





「こんにちは、姫様。」
「光秀!遅かったわね。」
「鍛練に熱が入り過ぎてしまったんです。」
「光秀、細そうに見えるけど、筋肉ついてるの?」
「ついてる、と思いますよ。」
「あ、ホントね。」
「!?」

いきなり姫様に腕を触られ、私はドキドキしていた。
そして、またわけの分からない感情がぐるぐる回る。

こうして普通に話すようになっても、わけの分からない感情の正体は分からずにいた。
私は、その正体を知ろうとせず、そのままにしておいた。



姫様と他愛ない話をする。

城の庭を散策する。

茶を飲む。

つまらないことかもしれないが、姫様が隣にいるだけで楽しかった。



そんなふうに、いつも姫様と過ごしていた。



そして、今日も同じことをしに、姫様の所へ行こうとしていたが…

「十兵衛。」

父上に声をかけられ、私は足を止めた。

「どうしたのですか、父上?」
「城に行くのか?」
「はい。」
「今日は、やめておきなさい。」

父上は刀の手入れをしながら、こちらを見ずに話しかける。

「何故ですか?」
「今日、城で織田の者が道三様と会見するそうだ。その準備で城は慌ただしくなるだろう。お前が城に行き、邪魔になっては迷惑だ。」
「…分かりました、父上。」

私は、姫様と会えないことに悲しみを感じたが、父上がおっしゃることももっともなので、姫様の所には行かなかった。





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