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□愛の矢文とカラクリの謎〜廃安土城の裏側〜
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宗矩は紙を広げ、何やら書き始めた。
しかも、書くことをわざわざ口に出しながら書いていた。

吊されていて何もできない茜は顔を上げ、何気なく紙を見た。

そして、違和感を感じた。

「なぁ、宗叔父。その『阿土城』って、間違ってるだろ」
「あ"ぁ?何処か間違ってんだよ」

この時代、修正液なんてない。いや、現代でも、墨で書かれた文字の修正は難しいかもしれない。

したがって、字が間違っていれば書き直さなければならない。たいへんめんどくさいことである。

「その『阿』は阿国ちゃんの『阿(ア)』だろ?」
「まてまて茜。阿国の名前のどこに『ア』って音があるんだ」
「は?阿国ちゃんは『オクニ』ちゃんだろ?」
「じゃあ、阿国の『ア』って何処にあるって言うんだよ」
「だから、名前の最初にあるじゃねぇか!」
「だから、阿国の名前の最初は『オ』だろうがぁ!!」

自分の言いたいことが相手に全く伝わらないので、そんなに気の長くない2人は苛々してきた。

そんな2人は声を荒げ、言い合いはヒートアップしてきた。

平行線のままの言い合いに焦れた茜は1つ提案をした。

「宗叔父!俺が字書いて説明してやるから、この紐解けよ!」
「説明できるもんなら、してみろよ!」

なんで宗矩が喧嘩腰なのかは不明だが、宗矩は茜を縛っていた紐を切り、筆を渡した。

茜は紙に『阿国』と書いた。

「阿国ちゃんはこう書いて、『オクニ』って言うの。んで」

次に、茜は『安土城』と書いた。

「この城は『安土城』で、こう書く!」

な?と茜は宗矩を見上げた。

「あ〜、そうかそうか。そう書くのか」

宗矩は納得して筆を持ち、続きを書き始めた。

「あ、宗叔父」
「なんだよ、茜」
「俺を縛っておかないと、俺逃げちゃうぜ?」
「お、そうだな」

宗矩は茜を縛って屋根に吊した。


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