CP小説

□たとえばこんなバレンタイン
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陽菜は綺麗にラッピングされたチョコを1つ持って、会社の下まで来ていた。
しかし、陽菜はふと気が付いた。

なんで、1つしか買ってないんだろう
なんで、社長の分しか買ってないんだろう

そこに気付いた陽菜は急に顔を真っ赤にした。

べ、別に社長にしか渡さないわけじゃないし、みんなにも……

チョコ、ないけど

……どうしよう

これじゃあ、まるで、私が社長のこと…

陽菜は会社に入ることもできず、会社の下でウロウロしていた。

「國生さん!?」

ビクッと肩を震わせ、陽菜は恐る恐る上を向いた。
そこにはビックリした顔をしている我聞がいた。

「社長…」

カンカンと音をたて、我聞が下に降りてきた。
陽菜は動くことも喋ることもできず、ずっと我聞を見ていた。
我聞も我聞で勢いで出てきたため、何をしたらいいか分からなかった。しかし、我聞の目に陽菜が持っている箱が映った。

「國生さん、それ…」
「いや、その…そういうつもりじゃ……」

急に顔を赤らめた陽菜に我聞はギョッとした。

「どうしたんだ國生さん!?風邪ひいたのか!?」
「ち、違います!!」
「取り敢えず、会社に戻ろう。寒いし…」

我聞は陽菜の手をとろうとしたが、陽菜はそれを避けた。

「國生さん?」

陽菜は顔を真っ赤にし、チョコを我聞に突きつけた。
思わず我聞はそれを受け取る。

「あ、あげますっ!今日はこれで失礼しますっ」

早口に言うと、陽菜は走って自分の家に向かった。

「え?あ、國生さん!?」

取り残された我聞は箱を見つめ、不思議そうな顔をしていた。





そして、そんな様子を社内から優と辻原と中之井はばっちり見ていた。
ちなみに、優特製の盗聴器が陽菜のポケットに入っているため、声もバッチリ聞いていた。

「うーん、もしかして我聞くんって、バレンタインを知らないのかな〜?」
「『なんか知らないけどチョコが貰える日』としか思ってないんでしょ」
「はるるんにはちゃんと仕込んだのにぃ」

優は悔しそうに呟いた。



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