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□Sweet dreams
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しばらく歩くと、目の前に大きな木が現れた。

「あの木の下なら、まあまあ、寝心地いいかな〜」

「まあまあ」をわざとらしく強調してテンは言った。

「そうだな」

カイは木の下まで歩いて行って、テンを下ろした。
テンはすぐに木の根元に座り、隣をポンポンと叩いた。

「どうした、テン?」
「カイはここ」
「?」

カイはおとなしく従って隣に座った。
すると、テンはカイの腕にもたれかかった。

「………」
「うーん」

カイは顔を少し赤くしたが、テンは気にすることなく考えていた。

「カイ、顔だけちょっとあっち向いてて」

あっち、とテンが示したのは、テンがいないほう――つまりは、反対側だった。

「な、なんでだよ!?」
「え〜、だって恥かしいじゃん」

恥かしい、という言葉を聞いて、今までの良くない歴史が思い出されたカイは益々赤くなる。

「なぁに想像してんのよ」
「だって、おまっ、変なことしないだろうな!?」
「しないわよ」
「本当か!?」
「さ〜?」
「どっちなんだ!!」
「いいからあっち向く!!」

しびれを切らしたテンがカイの頭を無理矢理『あっち』に向かせた。
しかしそれは一瞬のことだった。
テンはすぐに「いいよ」と言って、カイを解放した。
テンから解放されたカイは、改めてテンを見た。

「なっなんでお前成長してんだ!!」

そこには、17歳ほどの少女の姿になったテンがいた。

「え〜〜?だって…」

そう言いつつ、テンは頭をカイの肩に乗せた。

「!!??」

カイは顔を真っ赤にした。

「あーやっぱこれがちょうどいいわ〜〜。じゃ、おやすみカイ」

そう言うとテンは目を瞑ってしまった。
しかし、カイの顔の色は変わらず、一人であたふたしていた。

テンとの旅で比叡山にいた頃より女性への耐性がついたカイだが、婚約者が麗しい少女姿で接することには未だに慣れず、このように顔を赤くしていた。

「テ…」

とりあえず頭を退けてもらおうと、カイはテンを起こそうとしたが、声は途中で途切れた。

カイの肩には、安らかな寝息をたてて寝る可愛らしいテンがいた。
そんなテンを見て、カイはなんとなく起こす気を削がれた。

代わりに、カイはテンの頭を撫でた。
サラサラとした髪はさわり心地が良かった。

「おやすみ」

カイはそう呟いて目を瞑った。





木の下で

女は男の肩に頭を乗せ
男は女に寄りかかるように

2人は寄り添うように寝ていた。


fin
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