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□頂き物〜俺とロープとダブルデート〜
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明久
「ところで銀華、東城さんとデート?」
銀華
「ああ、まぁな」
全部俺の奢りでなければ嬉しいんだがな。
銀華
「そう言う明久もデートか?」
明久
「いや、デートと言うか罰と言うか……」
銀華
「何だ?何かあったのか?」
明久
「実は、朝起きたら美咲が窓から侵入してきて……」
銀華
「すまん。その時点でかなり厳しいと思うが」
まさか明久も雄二と同じようなことになっていたとは。
明久
「そのあと、部屋に入って来た姉さんが色々勘違いしてロープでぐるぐるに縛られて……」
銀華
「お前の朝はどうなっているんだ?」
明久
「さらには隠してあった三冊の秘蔵写真集が見つかって、姉萌えがなかったからっていう理由で全部燃やされて……」
銀華
「理不尽この上ねぇな」
明久
「それで罰として何故か美咲にクレープを奢るハメになったんだ」
銀華
「お前も大変だな」
俺が明久に軽く同情していると……
アヤメ
「銀ちゃん、明久君。早く行こうよ!」
と、アヤメに呼ばれた。
銀華
「ん?四人で行くのか?」
いつの間にか明久と星川を含めた四人で行く雰囲気になっていた。
美咲
「うん。どうせなら今日はダブルデートにしようと思ってね♪」
銀華
「……支払いは?」
アヤメ・美咲
「「そっち持ちで♪」」
ダッ!(俺と明久が同時に走り出す音)
ガッ!(俺と明久が同時に捕まる音)
グルグルグル!(星川が持っていたロープで縛られる音)
アヤメ・美咲
「「レッツゴー♪」」
銀華
「……明久」
明久
「……銀華」
銀華・明久
「「俺(僕)たちは、無力だ……」」
そのまま引きずられてデートに行くことになった。
その後、クレープを奢ったり服を見に行ったりゲーセンへ連れて行かれたりと色々な所へ引きずり回され、俺と明久の財布から一枚、また一枚と野口英世や福沢諭吉が消えていった。
美咲
「あー楽しかった♪」
アヤメ
「うん、凄く楽しかったね♪」
銀華
「………」
明久
「………」
和気藹々とする二人と違って意気消沈している俺と明久。
それはそうだ、お互い財布が真冬を迎えちまったからな。
アヤメ
「また一緒に遊びに行きたいね、銀ちゃん」
銀華
「……そうだな」
奢らされたことを差し引けば確かにこのダブルデートはかなり楽しかったからな。
美咲
「それじゃ、私たちは帰るね。ほら行くよ明久!」
明久
「あ、うん」
美咲
「それじゃ、またね!アヤメ、天童君!」
銀華
「ああ、じゃあな!」
アヤメ
「またね〜!」
星川は明久を連れて手を振りながら帰っていった。
アヤメ
「美咲ちゃん、か。また会えるかな?」
銀華
「……またその内会えるさ。な?」
アヤメ
「うん!」
またいつか……な。
余談だが、この日から数日間、泣きながら公園の水を飲んでいる明久を何回か目撃した。
FIN