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□ キスまで後数十センチメートル(康太)
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始めに言っておきましょう。私はムッツリーニくんが好きです。いや、好きじゃなくて愛しております。少しえっちいことを言うだけで、鼻血をドバドバだしている彼を守ってあげたくなります。
これは私の純粋な愛なのです。

「と、言うわけで私と付き合ってくれませんか?」

放課後、誰もいないことを見計らって、ムッツリーニくんを事前に呼び出していた私は、にこりとスカートを持ち上げて言ってみれば、それだけで鼻血をたらりと流すムッツリーニくん。と、言うわけでという言葉が理解できなさそうだが、告白だけでこんなに鼻血を出してくれる、そんな彼の冷静さは鼻血と共に消えているだろう。だから絶対つっこまない。かわいい、かわいい。なんて馬鹿可愛いの。
そんな彼が素敵で素敵すぎて、きゅんっと更に心を奪われる感覚がする。嗚呼、だから貴方は可愛すぎるのです!と叫びたい気持ちでいっぱいだったが、喉から出る言葉を必死に我慢して、更に微笑む。

「………」

ムッツリーニくんは何故か、喋らない。元々初心だとは知っている。
だけど、その沈黙が私には耐えられなくて、カメラを持って鼻血を出しているムッツリーニくんに近づき、後残り数十センチメートルでキスしそうな距離になった。

「ムッツリーニくん」
「……っ!!」
「そんなに鼻血を出してくれるって事は…脈ありですか?」

血の海ができそうなくらい(あまりにもオーバーだけど)鼻血を出して、呼び出した場所であるFクラスが無残な殺人現場に見えてくる。ムッツリーニくんが死んじゃいそうだけど、返事を聞いてから救急車を呼ぼう。なんて私は意地悪なの。でも、それが私の愛だからしょうがない
うふふ、と笑ってムッツリーニくんの返事を待っていれば、恥ずかしそうにコクンと小さく頷いてきた。

「え、っと…と、言うことは?」
「……………好き、だから、付きあう…」

ほんとほんとほんと!?夢じゃないよね!?と現実逃避をしそうになりながらも尋ねてみれば、カメラを床に落として、恐る恐る手を伸ばす彼。ボッチャン、と血の海にカメラを落としているが気にしない。私も震える手で手を握る。

「ムッツリーニ…いいえ、康太くん」
「………ん」
「愛してます」

キスしようと、更に近づいてみたのはいいのだけれど、鼻血の出しすぎで倒れた康太くんを助けるために救急車を呼ぶのは、あと五十七秒後。


2010 06 23
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