みんなの物語

□豊穣なる宇宙の宴2
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第U章〜幼魔行〜



午後三時、降魔が時、遥か昔から午後三時は人と魔が邂逅する呪われた時間だとされてきた、そんな刻。

怖い程に満月が美しい晩。
夜道を街灯と月が燗々と照す。

夜道にはナイフを持った男が一人。

彼は印南中に通う、何処にでも居るようなナイフ大好きのヤバめの人間だ、何故ナイフが好きかと言うとナイフを持つと自分が強く成った様な気がするからである。

彼は深夜に両親が寝たのを見計らうと、夜な夜な自分の力を行使する為の獲物を探しに外へ出る。

最初の頃は蛙や鼠といった小さな動物をターゲットにした。
次第に野犬や野猫といった大きな動物へ―――

彼は生き物にナイフの刃を入れ、最初は焼ける様な痛みにもがく動物が次第に力なく息を引き取ってゆく様を見るのが大好きであった。

腹を縦に切り裂き内臓をナイフでほじくる時、心が踊る。

頭を切り開き脳ミソを観察する時も心が踊る。

だが何よりも楽しいのは、自分の力で自分以外の生物を殺す―――生物は殺す事は出来ても生き返らす事は出来ない、ゆえに無益な殺生は絶対にしてはいけない事だ―――それくらいは彼にも分かっている、だが彼にとって悪い事をしたという罪悪感すらも、自分が他の生命を奪ったという―――自分が強いという高揚感をより一層強くする為の調味料に過ぎなかった。

生物の命を奪う時彼は絶頂すら覚えた、最高にエクスタシーであった。

たまらぬ愉悦、たまらぬ高揚、たまらぬ歓喜、それらが彼の体の中で炸裂し、一つに混ざり合い、全身を駆け巡る、あの感覚が堪らない、あの感覚が最高に好きだ。
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