みんなの物語

□蓬莱笛物語
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山頂から都を見渡し少女は笛を吹く。
笛を吹きながら少女は遠い遠い過去の記憶へ、

意識を潜らせてゆく。
もうどのくらいの四季を見てきただろうか?
もうどのくらいの四季をすごしてきただろうか?
彼女の記憶は平安時代まで遡る。
あの月姫に全てを壊されたあの日に。
あの月姫が地上に降りてこなかったら、
私はあの御方と…
でも、あの月姫が地上に降りてこなかったら。
私は本当の意味で、孤独なままだったかもしれない。



皮肉なほど綺麗な満月が夜空に煌々と浮かぶ。
月の光に照らされた竹藪が、風にざわめく。
父に恥をかかせた、あの憎きかぐや姫は、天からの使者と共に月へ帰った。
復讐はもはや、夢のまた夢…
だが、富士の山にて、竹取の翁から略奪した蓬莱の薬により死ぬに死ねない。
何度も何度も崖の上から身を投げた。
生きていても恥になるだけ、
生き恥を晒すのであれば、潔く死ぬ。
幾度目の身投げだろうか、それすらも存ぜぬ程に、ただ身を投げた。
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