Novel

□エヴァ逆行のワンシーン
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「気持ち悪い。」
その言葉を彼女がどんな気持ちで言ったのか、今はもうわからない。
ただ彼女もこの海に還ってしまった。
どんなに待っても誰も帰ってこない。
きっと永遠に帰ってこないのだろう。

何故こんな事になったのだろう?

ただ僕は父さんにの手紙を読んで、
もしかしたら必要とされているのかもしれないと思って、
もしかしたらまた家族に戻れるかもしれないと期待しただけだったのに‥‥。



‥‥‥それとも僕がそんな事を期待したのが悪かったのだろうか?

初めて友達が出来て嬉しかった。
皆が必要としてくれる。
エヴァのパイロットとしてだけれど、
死ぬかもしれないし、シンクロしてるからマグマに入った時は凄くきつかったし、本当に痛くて怖くて辛かったけど、
それでも幸せだった。


だからいけなかったのだろうか?

家事はほとんど全部僕がやっていたし、
『ネットに入れて洗濯しないせいでお気に入りの下着が台無しになった』とか言われて、アスかには殴られたし(しかもペンペンのイタズラが原因だった。)、
一々味に文句を言うくせにお弁当作れって言うし。
修学旅行にも行けなかったし
訓練も大変だったけど。

でも本当に楽しかった。
多分一番幸せだった。


だからいけなかったのだろうか?

楽しい事だけ数珠つなぎに出来るはずがないから。
あの日々は僕なんかが手に入れてはいけなかったのかもしれない。



だからいけなかったのだろうか?
なら、どうすれば良かったのか?
もうわからない。
何も考えたくない。

どうせ手遅れだから。

僕も消えよう。
皆がいる世界が良いと思ったから、だから傷つけ合うのが怖くても望んだのに。
誰もいない。
ならいなくなろう。
世界は終わってしまった。



……せめて皆にもう一度会いたかった。








そして変化が起きた。
他者を望む碇シンジが
全てが溶けたLCLに入った。
それが何を意味するか?

綾波レイは言った。

「自分の形が思い描けるなら戻って来れる」
「全てが曖昧な脆弱な世界」


全ての人が互いを補完し
自分と他人の区別が出来ない世界。
そこから戻ってのは自分の形を描けるものだけ。

だから戻って来れるのは現時点ではシンジだけ。

だが全ての人が溶けて曖昧になっていた世界に他者を望むシンジが同化した。
なら、シンジの思いも全ての人に溶けるだろう。
自分と他人の区別が出来ない世界なのだから。

それは碇シンジの願いを
人々に都合が悪くない範囲で叶えさせた。
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