リクエスト
□コアクマオレンジ
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「あぁっ!またやられた!くっそー」
「ははっ苦戦してるみたいだね」
ベッドに胡座をかいてゲーム器を操作する俺と、床に座ってそのベッドに背を預けながら雑誌を読んでた千石さん。
「すっげぇ難しいんすよーこれ!」
「確かレベル30まで上げなきゃいけないんだっけ?」
…その通り。仁王先輩に命じられた俺への罰ゲーム。難しいって評判のこのゲームを、しかもまだレベル10のこれを30までって。鬼じゃねあのペテン師!
「酷いんすよー?丸井先輩もグルになって仁王先輩と二人がかりで俺を!」
「あはは!本当に三人はいつも仲良しだよね」
「仲良し、なんすかねー。いっつもいじめられてる気が…」
「それが心許してるって証拠だよ」
ニコニコと千石さんにそう言われると、そうなのかなって気がしてきた。
「あ、そう言われたら…他の2年のやつらにも俺だけ先輩の態度が違うって言われたことあるかも…」
「でしょー?丸井くんや仁王くんだけじゃなくて他の先輩たちも切原くんのこと可愛がってるように俺には見えるよ?」
他の先輩…?
「あぁ…前、昼飯食いっぱぐれてたら柳先輩がパンくれたっす」
「ほら、やっぱり」
「他にも、宿題やんの忘れて部室でやってたら呆れながらも柳生先輩が教えてくれたし…授業で使う辞書忘れて困ってたらジャッカル先輩が──」
思い返してみたら色々と俺に気を掛けてくれる先輩たちに気がついた。本当だ、俺ってもしかして自分が思ってる以上に可愛がられてる?
ちょっと嬉しくなって思いつくまま述べてた俺は千石さんの返事がなくなってたことに気がついてなかった。
「そうそう、前は幸村部長と真田副部長にも──…っと、あれ?千石さん?どうかしたっすか」
ニコニコと話を聞いていてくれてた千石さんがいつの間にか俯いていた。
「千石さん?」
「んー……いや、なんでもないよ?本当に立海のみんなは仲イイなって思ってただけ」
そう言って笑ってくれたから安心する。
「…でもね?うちも仲イイんだよー」
「山吹っすか?」
「うん!
昨日なんかね、南が俺を探し回ってくれてたみたいでさ休み時間全部潰れちゃったんだって。俺愛されてるよね〜?」
嬉しそうに話す千石さん。…愛されてるってのに少し引っかかるけど。
「他にもね、室町くんが俺に教えて欲しいことがあるから今日は絶対部活に来て下さいって離れなかったりさぁ?壇くんだって朝からねぇ──」
……なんだろ。
なんかモヤモヤする。
仲がイイのはイイことなんだろうけど…なんか、聞いてんのイヤっつーか。
「あ、そうそう!亜久津っていつも屋上に1人でいるからさ俺よく話に行くんだけど。文句言いながらもずっと隣に座ってるから本当は俺のこと好きなんだと思うんだよねー」
ニコニコと俺が知らない間の話をする千石さんがなんだかイヤで、他のやつの話を楽しそうにする千石さんが見たくなくて、俺は背を向けてしまう。
「切原くんはどう思う──…あれ?切原くん…?どうか、した?」
こんなん完璧に…嫉妬じゃん。格好悪い、俺。ただの部活仲間にこんな…。
答えられないままでいると、
「─うわっ!?」
後ろから突然肩を引かれてそのまま仰向けに転がってしまう。
「どうしたのかな…?切原くん」
「っ…!」
仰向けに寝た状態の俺の顔に掛かる影。のぞき込むように反対向きの千石さんの顔が俺の視界いっぱいに広がった。
「せ、千石さん?」
「ん?なに…?」
笑ってるけど目が笑ってないような気がして少し背中がゾクリとする。