リクエスト

□ロング・ロング
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「あれ、新しいマフラー買ったのか?」
不動峰の校門前で、駆け寄って来た愛しの神尾の首に前回会った時とは違うマフラーが巻かれていてそう訊いた。そしたら、
「あぁコレ?前のやつ親戚ん家の犬にボロボロにされたーって言ったら、クラスの奴がくれたんだ。応援してるぜだって。へへーん、いいだろー?」
ってな感じに浮かれて(コレ絶対狙われてるよな?な?)話すモンだから、その場で教室に乗り込まなかった俺を褒めてほしい。寧ろ誉め讃えてほしい。
「でもコレ長いんだよなあ…前のが厚くて短いやつだったから、ロングマフラーが巻き難くて」
「…じゃあソレ、誰にやってもらったの?」
言ってる割にキッチリと巻かれ、剰え首の後ろで結ばれているマフラーを指差しながら嫌な想像が脳裏を過る。
「ん?だからコレくれた…」
神尾が答えを言う前に、昇降口から駆け寄って来る男子生徒が目に付いた。何やら手に持った布製の筆箱を振りながらこっちへ向かってくる。
「神尾ー、忘れモンー」
どうやらソレは神尾の物らしい。言われてみれば見た事あるような気もすんな…
「おお、コイツにしてもらったんだ!」
余程仲が良いのか、マフラーありがとなーなんて満面の笑みでソイツの肩をバシバシ叩いている。ああ、いつものやつだ。アレ結構痛いんだよな…と思うと同時にソイツの眉も微妙に歪められて、やっぱり遠慮無いんだと思った。…じゃなくて、
「ふーん…アンタがやったんだ?」
「ん?ああ、神尾ぶきっちょだから」
目を半眼にしてジロジロ見ながら訊く俺に、ソイツは笑顔で答えやがった。…鈍感が鈍感を狙うってどうよ、俺の視線の意味に気付いてなさそうなんだけど。
「ぶきっちょ言うなあー」
不貞腐れて足をぐりぐり踏みつけている神尾に悪い悪い、なんて笑いながら言う奴は確かに神尾が気に入りそうな感じだ。
「大体長いのなんか…え?」
「あ、え?」
神尾とクラスメイト君が一緒に固まる。俺がマフラーを解いて二人纏めて包んだからだ。勿論、俺と神尾を。
「なっ、ななな何やってんだよ!」
「だぁって俺も寒ィんだよ。ずっと此処で待ってたんだし。長いんなら入れろ」
そう言って無理矢理ぐるぐると巻き付ける。多少手荒いが、これぐらいしないとクラスメイト君は気付いてはくれないだろう。案の定固まった後に俺に向けてきた目はムッとしたものだった。
「神尾、何処行く?折角着替えてんだし、駅前の方行くか?」
「へっ?あ、ああ。そうだなー、俺腹減った」
さっきまで動揺していた神尾も、俺が何て事無い態度で言えば釣られて普通に戻る。普段もっとくっついているのだから、これぐらいで慌てふためきはしない。残念だったな、クラスメイト君。

“コイツは俺のモンだ”

隣で神尾が何処の店行くか悩んでいる隙にぱくぱくと声を出さずに口を開閉しながら、今度はただ見るじゃなく睨みつけてやる。目つきが悪いと評判の、感情を込めずに相手を見下すような目で。充分に伝わったようで、ビクリと体を強張らせてそそくさと帰って行った。
「なあ、ってあれ?アイツは?」
「んー?何か慌てて帰ってったぜ」
しらばっくれて答える。あんな奴の事は忘れて俺との時間を楽しめ。
「よし、行くか!」
「おう!…ってちょっと待て、このままでか!?」
明るい笑顔で踏み出した俺に合わせて歩きながら、神尾が焦ってマフラーを解こうとしている。
「モチ、このまま。神尾は嫌?」
物凄く嬉しいんだと言うように笑みを濃くしてやれば、解きかけた手を止めて渋々、少し恥ずかしげにマフラーを直す神尾。
「ずりィよ…バカ」
ああ、俺は狡いよ。俺の笑顔が態とだと気付きながらも無理に反対出来ないのだと知って、神尾とくっついてられるならとこの笑みを浮かべているんだからな。

何たって俺は、
切原赤也だ。





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相互の際にリクエストさせて頂いた切神です☆もう!カワイイです〜(≧▽≦)イラストもカワイイ!

ありがとうございました!!



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