その他

□『ユウジと光』
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「…結構降ってんなぁ。どないしよ」

今日に限って担任が雑用あるから日直は放課後手伝えて言い出して。
で運悪く今日の当番は俺で。

やっと終わって帰れると思たら外は結構な雨が降っとった。

白石部長から「今日は部活無しやからそのまま帰ってええで」てメール来てたから部室には誰もおらんやろうし

「濡れて帰るしか無いんか…」

て呟いた時やった


「あ?財前?」

後ろから聞き慣れた声


「お前まだ帰っとらんかったん?」

そう言って玄関で立ち尽くしてた俺の横に並ぶのは

俺の恋人兼先輩の

ユウジ先輩やった。





「担任に雑用押し付けられてたんすよ。
ユウジ先輩かてこんな時間まで何しとるんすか」

「俺か?俺は今度の漫才ライブのネタ考えとって気ぃついたらこんな時間やってん」

「一人やなんて珍しいすね。小春先輩は?」

「小春は用事がある〜とか言うて先に帰ってしもてな!折角相合い傘して帰ろ思てたのに!」



…そう。

こんな会話は日常茶飯事。俺ら付き合うてるハズやのにユウジ先輩はいつも小春先輩を追いかけとって。
下校やってほとんど一緒にしたことも無かった。
…ほんまに俺のこと好きなんかな、とか思てしまう。

けど。

偶然でもこうやって会えただけで嬉しいとか考えてしまうくらい俺はユウジ先輩のことが好きで。


「で、こんなとこでつっ立ってなにしてん?帰らんのか?」

「傘、無いんすわ」

「うわーアホやなお前。やみそうに無いで」

そう言いながら傘を開くユウジ先輩


「………。
…じゃ、俺帰るから。また明日な」

「…はぁ、じゃあ」


パシャパシャと雨音を立てて歩いていく後ろ姿を見つめる


…小春先輩とは相合い傘するつもりやったて言うてたのに

俺とはする気無いんやなぁ…

好きなんは…やっぱり俺だけなんかもしれん

「はぁ…」

思わず溜め息をついてしまう


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