10/25の日記
21:48
No.6設定パロ(謙光).2
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こう簡単に名前を明かせるのでさえ、平穏で危険など何も無い世界で生きてきた証。
「…ヒカル」
「ヒカル?ヒカルか。ええ名前やな!これで一つ知れたで!」
「せやから、そういう事や無─」
「─VC410720。」
「!」
「…さっき食事取りに行った時にテレビでやってた」
─VC410720。
俺に付けられた番号。
矯正施設と呼ばれる、言わば死刑場─に収監される者は名前を奪われ代わりに番号を割り振られる。
その中でもVCが付く番号は、
「VC…凶悪犯罪者なんて凄いな、なにやったん?」
「…アンタ、俺のこと知ってるくせに匿って、かなりヤバいで?」
「せやなぁ。むっちゃヤバいと思う」
平気で言い放つ目の前の坊ちゃんに思わず溜め息が出た。
「せやったらなんで助けてん。頭おかしいんか?」
「やって、目の前にケガしとる奴がおったら助けんのが普通やろ」
─普通。
「へぇ…普通ねぇ。それはアンタにとっての普通や、」
「え─」
ベッドに腰掛けていた無防備過ぎる身体に馬乗りになって、手を床に縫い付け持っていたスプーンを喉元にあててやる。
きっと相手には一瞬のことだっただろう。
「俺の世界じゃ、これが普通や。死ぬか生きるか。殺すか─殺されるか─。
これがナイフじゃなくて良かったな。アンタ今頃死んでんで」
別に本気で殺ろうとした訳じゃない。どこまでも呑気なこの坊ちゃんに思い知らせてやろうと思っただけ。俺とお前は違うのだと言うことを─。
「…凄いな。どうやったらこんなにも一瞬で人間の身体が動かんようになるん?ツボ?コツ?」
なのに、またも呆気に取られたのはこちらの方だった。
どういう状況なのか理解していないのか、いや、理解してるであろう上で楽しそうに問うてくる金髪の少年。
「くっ…ふっ、ははっ、はははっ」
思わず笑えてきた。笑うしか無い。こんな人間見たことが無い。腕から力が抜けてそのまま倒れ込む。
重なり合った身体から体温が感じられた。
「ヒカル…?お前、なんや身体熱ないか?」
「…暖かい…生きてる人間て、暖かいんだな」
心地良い。久々過ぎて忘れていた感覚に瞼が落ちていく。
「熱なら抗生物質飲まな」
「…うるさい。このままで、いい…眠いんや。寝かせて…」
そのまま俺の記憶は途切れ─かけたが、最後に。
「…ケンヤ」
「なんや?」
「……おおきに。」
それだけ言って今度は本当に眠りに落ちていった。
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