☆神堂家のお茶の間☆
□暗闇ドキドキ:春とはじめてシリーズ,10
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私がJADEのボーカル神堂さんと付き合いだしてまだ間もない頃、多忙でゆっくりと会えない中で、ようやくスケジュールの隙間をぬって会えた冬のある夜のこと。
偶然同じスタジオで仕事が入り、しかも上がりも同じ夜8時過ぎ。
それでせっかくだからドライブしようということになった。
神堂さんはさほど運転はしないので自分では車を持っていない。
だから必要に応じてレンタカーを借りるか、JADEメンバーの車に乗り込むかのどちらからしい。
この日もわざわざ私のために車を借りてくれた。
「どこへ行くんですか?」
助手席に納まりながら私が聞くと、神堂さんはふっと笑って
「秘密。」
と答える。
彼と二人っきりで過ごすことにまだ慣れない私は、そんなちょっとした会話でもドキドキしてしまう。
なんとなく会話に困り、私はなにか話題をさがさなくちゃといろいろと思いめぐらすけどなかなか思いつかなくて、窓の外を眺める。
もうすっかり冬模様となった12月中旬。
間もなくクリスマスがやってくるので、街中はすっかりクリスマスの風景で溢れている。
ライトアップされた並木通りが神秘的な輝きを発している。
思わず
「うわぁ、きれい。」
と感動して声を漏らすと、神堂さんも相槌を打ってくれた。
「そういえば、神堂さんの歌にイルミネーションの風景を歌ったのありましたよね。恋人たちの似合う季節で。」
「ああ、まだデビューして間もない頃の…」
「『冬の夜空の下、光の洪水、君の笑顔が温かくて』って」
フレーズを口ずさむと神堂さんがちょっと微妙な表情をする。
どうしてかなと不思議に思って彼の横顔を見ていると、運転しながら彼はつぶやいた。
「発光ダイオードに代わったら光が白や青が多くなって、ちょっと冷たい感じだ。」
言われてもう一度窓の外を見た。
そう言えば、私が小さい頃は赤や黄色や緑といった色のイルミネーションが多かったな。
「そうですね。白も青もきれいだけど、冬空には寒く見えるかも。」
そんなどうっていうことない会話を交わしながら、車は湾岸線に入って海の近くへ進んでいく。
道路や車のライト、ビルの明かり、羽田空港の発着する飛行機のライト、遠くに見える臨海公園の観覧車の花火のようなライトアップ。
それらが流れるように移って行き、私はうっとりと眺める。
そう言えば、芸能界デビューしてからずっと忙しくて、こんな風にゆっくりドライブしたり、夜景を眺めたりしたことがしばらくなかった。
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