八重桜の物語

□第四章
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しばらく歩くと誰もいない屋上へと続く階段の踊り場に来ていた。

「・・・・・・?」

月には水川が何の用事かわからないので首を傾げていた。そして水川は再度月を見た。

「あっ、あの・・・」

「はい?」

「・・・す」

「酢?」

「好きです!」

「・・・・・・・・・・・・はぁ?」

突然の告白の言葉に月は驚きを隠せないでいた。

「一年の時からずっと好きでした」

「・・・・・・」

「この前森丘高校の奴と噂になっていたらしいけど、デマだったよね」

「え、ええ。私は誰とも付き合っていないわ」

「そっかー、だったら俺と付き合ってよ」

「・・・・・・」

月はどう返事するべきか考えていた。答えは決まっていたが・・・・・・

「ごめんなさい。私は誰とも付き合うことはしないの」

「なんで!」

「・・・今はやらなければいけないことがあるから、ごめんなさい」

月はそういうと水川の顔を見ずに教室へと帰って行った。

教室に着くとさっそく東雲が近付いてきた。

「ねぇ、水川くん、何の用事だったの」

「告白された」

「えーーーー!」

「でも、断ったわよ」

「勿体ない」

「いいのよ、私は誰とも付き合うことはしないんだから」

「月は気になる人でもいるの?」

一瞬ある人の顔が思い浮かんだが、月は横に首を振った。

「ううん、今はしなくちゃいけないことがあるから、それどころじゃないからね」

月はそういうと、自分の席に座った。
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