八重桜の物語
□第四章
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鬼の一族を狩る者が現れた次の日。左之助はどうやら月の怪我について誰にも話さないでいてくれている。
が、月との距離が少しずつ開いているように感じる。
「・・・はぁー」
自分の机に座り月は小さくため息をついた。
「なーに、月。悩み事?」
近くにいた東雲には聞こえていたらしく月はそちらに顔を向けた。
「まーね、色々とね・・・」
「何よ、その勿体ぶるような言い方」
東雲がさらに近づいてきたが、それは別の声により遮られた。
「おーい、春日さん。お客さん」
クラスメイトに声をかけら月はそちらの方向に視線を向けた。
扉には別のクラスの男子がいた。
「・・・確か、水川透くんだっけ?」
「さすが、月だね。全クラスの名前は覚えているんだ」
東雲はそう言い、月はそちらに近づいた。
「えっと、水川くん。私に何か用?」
「えっと、ここじゃ、なんですから」
そういって水川は月に後ろを向いて歩いて行った、どうやら付いてこいということらしい。
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