【寝言】
『 くかー くかー 』
現在、夜中の2時。
孫家はすっかり寝静まっていた。
そんな中…
「…っ」
(…まだ夜中だ…)
チチは、目を覚ましてしまった。
夫・悟空は隣でぐっすり眠っている。
「…ふう」
手には汗が滲んでいる。
悪夢を見ていた。
「…悟空さ」
チチは隣にいる悟空の寝顔を見て、胸を撫で下ろした。
(嫌な夢を見ただ…悟空さ…)
セルの時のように悟空が、また遠くの人になってしまう夢を見たようだ。
「もう…遠くには行かねえでけれ……」
すると
「…行かねえよ…」
(─え!?)
チチの願いに、悟空が反応した。
「悟空…さ?」
しかし、反応はない。
「…寝言だったんべ」
(もう、あの悲しい思いはしたくない)
チチは、また睡魔に襲われ深い眠りに堕ちた。
─────…
───…
翌朝。
窓からはキラキラと朝日が差し込む。
「おはようだ。悟空さ」
チチはいつもどおり目覚めた。
「おう」
悟空もいつもどおり目覚めた。
「今日も1日頑張るだぞ!」
「…チチ」
悟空が呼び止めた。
「何だべ?改まって」
悟空は言いづらそうに下を向いた。
「オラは、チチのもとからずっと、離れねえぞ」
(…!!)
悟空は、聞いていたようだ。
「だから、もうオラのいなくなる事なんか、考えるな」
「悟空さ…」
(…やっぱり、悟空さはオラの旦那さまだ)
「絶対離れるでねえだぞ?」
「ああ。離れねえよ」
そういうと、2人は自然に手をつないで寝室を出て行った。
それからというもの、チチは悪夢を見ることは無くなったという。
end.