あの頃…
□不思議少女ギロちゃん
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昔、近所に住んでいた、
ギロちゃんの話し。
小学校3年の春、僕はギロちゃんという顔黒の女の子と同じクラスになった。
新クラスになり程なくした頃からギロちゃんは不思議な行動にでるようになった。
昼休み教室から消え、ロッカーの中から出てきたり、授業中、いきなり逆立ちしてみたり。
そう言えば消しゴムを4つ食べた事もあった。
夏休み前にもなると、ギロちゃんの不可解な行動はエスカレートし、トイレから消えた!とか、宇宙人の兄がいるなど、伝説も生まれていった。
そして夏休みに入った頃位から、ギロちゃんの家の周りにはボロボロの自転車が、何故か集まりはじめる。
夏休みが過ぎ秋になる頃には、その数は100台にもなり、その数は日に日に増え続ける。
ある日の事、ギロちゃんに思いきって聞いてみた。
僕『ギロちゃん、あの自転車は何?』
ギロちゃん『持ち主に捨てられた自転車が自然に集まってくるんよ』
僕『ギロちゃん、スゲー!!』
こうしてまた1つ、新しい伝説が生まれた。
秋も深まったある日、
友達と遊んでいると、自分の買ったばかりの自転車(ギャバン号)が無い事に気付く。
半ベソかきながら、辺りを必死に探したが出てこない。
警察に届けを出してみたが、結局僕の6段変速機つきギャバン号はどこかに消えた。
僕はギロちゃんに、
『僕の自転車が帰ってきたら教えてな』
と、いうと、
ギロちゃん『わかったで!』
と、眩しい位の笑顔で答えてくれた。
そして初雪が降り始めた10月終わり、数々の伝説を作ったギロちゃんが転校する事になった。
お別れ会の時もギロちゃんは、段ボール食べたり、お別れのプレゼントの鉛筆を腕に突き刺したりしてみんなの視線を釘付けにしていた。
そんなギロちゃんでも、いなくなると、
みんな寂しがっていた。
ギロちゃんが去り、数日すると雪も本降りになり、だんだん積もっていく。
やがてギロちゃん家の前の自転車達もやがて雪で見えなくなった。
やがて厳しい寒さは峠を越え、僕は4年生になった。
4年生になって間もないある日の日曜日の朝、
外が騒がしいのに気付く。
眠たい目蓋をこすり、窓を開けると、ギロちゃんが住んでいた家の周りに、トラックや、人だかりができている。
前に聞いてはいた。
そう、とうとうあの自転車達が撤去されるのだ。
僕は帰ってこなかった、ギャバン号の事を思い出し、少し切なくなった。
やがて僕も大人達の輪の中に加わり、手伝った。
サドルが無いものや、ペダルが割れたもの、車輪がないものまであった。
作業も後半に差し掛かかった頃、
錆びてはいるが、珍しくどこも壊れていない自転車が出てきた。
よく見ると、ギャバンのシールが貼ってある。
『ギャバン号だ!!』
そう叫ぶと、ギャバン号に思い切りかけよった。