あの頃…

□ムールカレー
1ページ/2ページ

小学生の頃の月に1度の楽しみ。

それは母の給料日。

母の給料日には家族で外食。

小学生の頃の僕は、数日前からその日がくるのを楽しみにしていた。

今なら安くハンバーグや、ステーキを食べられる、ファミレスなどがあるが、当時、近所にはロイヤルホストしかなかったので、外食といっても、もっぱら近所のラーメン屋か、定食屋だった。

この日も、先月ラーメンだったから、今日は定食屋だろうと思っていたのだが、予想に反して『カレー』。
なんと先週からカレーフェスタなるものが、近所のダイエーで行われているらしい。

カレーフェスタというのは、アジアの国々の色々なカレーを集めたイベントだった。

僕は何か物凄いカレーが食べれる気がして、いつも以上に興奮したのを憶えている。






当日。





学校から寄り道せずに帰り、母が帰る午後6時過ぎ、妹を連れ駅に向かう。


駅に着くと、改札口はサラリーマンや学生で溢れていた。


迷子にならないよう、妹の手をしっかり握る。


普段はそんなに面倒見がよくないのだが、今日は別。

万が一、妹がはぐれてしまったら、母がキレて外食どころじゃなくなるからだ。

そうこうしているうちに、母が乗ってるであろう、普通電車がホームに入る。


僕の頭の中は、物凄いカレーでいっぱいになる。


母が改札から出てきたのを見つけると、人混みをかきわけ抱きついた。


久々に会えた家族のように僕も妹もはしゃいでいた。




駅とダイエーは通路でつながっている。

僕ら家族が目指すのは、カレーフェスタの会場。

午後7時すぎ、カレーフェスタの会場に到着した。

テーブルは満席に近い状態で込み合っている。

とりあえず、3人席を確保すると一通りどんなカレーがあるのか、見てまわった。

インドカレー、スリランカカレー、ベトナムのカレーなど色々あって目移りした。

それぞれ食べるカレーを決め、僕と妹は席へ。母は券売機へ向かう。

僕は、インドチキンカレーに決めた。

ワクワクしながら席で待っていると、母が帰ってきた。

母いわく、ほとんどのカレーは売り切れで、残ってるカレーはインド野菜カレーとムールカレーの2つしかないとの事。

母は、カレーをやめてラーメンにするか?と聞いてきたが、僕は完全にカレーモード。

僕は野菜が食べれないので必然的にムールカレーになる。

妹と母は野菜カレーにした。母はムールカレーなんてどんなカレーかわからないから止めなさい。と言ったのだが、僕は母の言うこと聞かず、ムールカレーにした。





しかし、一抹の不安はあった。


ムールカレーって、どんなカレー?


しかし僕は、カレーと名のつくものにマズイものはない、とその時は信じていた。






待つ事15分、その『ムールカレー』は僕の前にやってきた…






続く…
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ