あの頃…
□ムールカレー
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小学生の頃の月に1度の楽しみ。
それは母の給料日。
母の給料日には家族で外食。
小学生の頃の僕は、数日前からその日がくるのを楽しみにしていた。
今なら安くハンバーグや、ステーキを食べられる、ファミレスなどがあるが、当時、近所にはロイヤルホストしかなかったので、外食といっても、もっぱら近所のラーメン屋か、定食屋だった。
この日も、先月ラーメンだったから、今日は定食屋だろうと思っていたのだが、予想に反して『カレー』。
なんと先週からカレーフェスタなるものが、近所のダイエーで行われているらしい。
カレーフェスタというのは、アジアの国々の色々なカレーを集めたイベントだった。
僕は何か物凄いカレーが食べれる気がして、いつも以上に興奮したのを憶えている。
当日。
学校から寄り道せずに帰り、母が帰る午後6時過ぎ、妹を連れ駅に向かう。
駅に着くと、改札口はサラリーマンや学生で溢れていた。
迷子にならないよう、妹の手をしっかり握る。
普段はそんなに面倒見がよくないのだが、今日は別。
万が一、妹がはぐれてしまったら、母がキレて外食どころじゃなくなるからだ。
そうこうしているうちに、母が乗ってるであろう、普通電車がホームに入る。
僕の頭の中は、物凄いカレーでいっぱいになる。
母が改札から出てきたのを見つけると、人混みをかきわけ抱きついた。
久々に会えた家族のように僕も妹もはしゃいでいた。
駅とダイエーは通路でつながっている。
僕ら家族が目指すのは、カレーフェスタの会場。
午後7時すぎ、カレーフェスタの会場に到着した。
テーブルは満席に近い状態で込み合っている。
とりあえず、3人席を確保すると一通りどんなカレーがあるのか、見てまわった。
インドカレー、スリランカカレー、ベトナムのカレーなど色々あって目移りした。
それぞれ食べるカレーを決め、僕と妹は席へ。母は券売機へ向かう。
僕は、インドチキンカレーに決めた。
ワクワクしながら席で待っていると、母が帰ってきた。
母いわく、ほとんどのカレーは売り切れで、残ってるカレーはインド野菜カレーとムールカレーの2つしかないとの事。
母は、カレーをやめてラーメンにするか?と聞いてきたが、僕は完全にカレーモード。
僕は野菜が食べれないので必然的にムールカレーになる。
妹と母は野菜カレーにした。母はムールカレーなんてどんなカレーかわからないから止めなさい。と言ったのだが、僕は母の言うこと聞かず、ムールカレーにした。
しかし、一抹の不安はあった。
ムールカレーって、どんなカレー?
しかし僕は、カレーと名のつくものにマズイものはない、とその時は信じていた。
待つ事15分、その『ムールカレー』は僕の前にやってきた…
続く…