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□名前で呼んで、
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「白石、」

ふいに呼ばれ振り返る。
そこには、同じテニス部員の一氏ユウジがいた

「なん?ユウジ」
「あ、いや、今度の練習試合やけど」
「おん」

俺の座っていた長ベンチの横に座り、オーダーを覗く。
ちょ、近…

「そんで…ん?なんや、白石」
「あ、なんでもあらへんわ」

睫毛長いなーとか、肌キレイやなーとか思ってたとは言えへんし…
自分で分かるほど顔が赤くなっているのが分かる。頭にクエスチョンマークをつけているユウジ。

「…なんやねん白石」
「……なぁ、」
「おん?」
「なんで名前を呼んでくれへんの」
「なんでって…」

お前に関係あらへん、そう呟いたユウジの声は、至近距離にいる俺にはばっちり聞こえていた。

「名前で呼んでや」
「嫌や」
「なんで?」
「…恥ずかしいやん」
「恥ずかしいん?」
「…おん」

もう、かわええ子。
小春にはもったいないなぁ。俺が盗みたいくらいやわ

「じゃぁ、一回だけ呼んで」
「…ら…け…」
「んー?聞こえへんなぁ」
「くら、の、すけ」
「はっきり」
「蔵ノ介っ」
「よく言えました」

頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めた。可愛いすぎる…微妙に赤い顔も、全部、全部が愛しい。

「大好きやで、ユウジ」

蚊の鳴くような声で言った。

ユウジに聞こえてなければええんやけど、






名前で呼んで
(大好き、)
(だから名前で呼んでくれや)

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