【新】闇の黒蝶

□part3
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少女はレイというらしい。
俺の名前を聞いたので言おうと思ったが、なぜか思いついた偽名を名乗る。


「…ギタラクル」


「ギタラクル、ね。助けてくれてありがとう…助かった。」


名乗ると、そう言ってお礼をいうレイ。
助けたわけじゃないし、お礼を言われる筋合いもないので否定する。


「…べつに、助けたわけじゃない。そっちの倒れてる男が依頼対象だっただけ。君のためじゃない」


そういうと彼女は少し困った顔をすると、少し考えるしぐさをする。


「…それでも」


そこでいったん言葉を切って、息をのむほど美しい微笑みを浮かべながら俺に視線をあわせる。

そして、


「やっぱり助かったから、ありがとう」


といった。


ありがとうなんて言われたことがないからなのか、美しい微笑みに圧倒されたのか。

俺は自分の心に温かいものがあふれてくることに気付いた。


なんだろ…これ。


不快じゃない。でも今まで感じたことのない感情だから、少し戸惑う。



そんな思いを振り切るようにレイに絡みつくつるを念が帯びた手で切ると、彼女を解放した。

鉄のつるが簡単に壊されたことに驚いているんだろう、俺を見上げるレイを見たとき、俺は固まった。


破られた服を頼りなさげに寄せるが、まったくもって意味をなさず、下の艶めかしい肌があらわになっている。

しかもレイはまったく気づいていないらしく、そんな無防備な姿にため息が漏れる。


俺は彼女に来ているコートを差し出した。


「??」


その意味がわからないらしくレイは首をかしげる。
俺は再度ため息をつくとぶっきらぼうに言った。


「着ていいよ。そんな恰好でうろうろしててもまた絡まれるだろうし。」


「ありがとう」


そういうとレイはまた美しく微笑みと、お礼を言った。

またしても広がる感情を、俺は見て見ぬふりをする。




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