〜VOICE ACTOR〜

□片思いは両思い♪
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私はいつもあの人を見ていた。

淡い恋心は自分の中にしまったまま、会話する時はいつも笑顔で話していた。












片思いは両思い♪














いつもの様に私は1番のりでスタジオに入る。
いつもの指定席に座って台本チェックを始める。

「今日は、難しい台詞があるんだよね。……結構練習してきたけど、成功率……ハァ、悪いんだよなぁ」

一人ぶつぶつ文句を言っていると、クスクス笑う声が聞こえて私は慌てて顔を上げると、そこには大川さんが笑っているのに気が付いた。
私が気付いた事で、大川さんは「おはよう」と声を掛けてくれた。

「ごめんね、笑っちゃって……成城さんが一人で台本とにらめっこしながらブツブツ言ってるのが面白くて……ププッ、アハハハッ……」

「大川さんっ!そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!?
……こんなに必死になってるのに、……むぅ、……大川さん、そんなに笑うならコレ言って見てくださいよ!」

台本を差し出し、マーカーで塗られている今にも噛みそうな台詞を指差し言ってみろといった表情で睨む私に、台詞を見た大川さんから笑いが止まる。

「……うっ!……その台詞だったのか……」

大川さんも、この台詞には気付いていたようで、ササッと後退りした。
私は恨めしそうな表情で大川さんを見る。

「わかりますか、私の今の気持ちが……コレはどうやっても、抜きでやれないんですよ!ぶっつけ本番でやりきるしかないんですよ!……わかりますか、この私の苦悩がぁ!?」

思わず詰め寄って本音をもらしてしまった。
ハッ!と我に返って、とぼとぼと自分の指定席に座ると小さく「すみません」と謝っていた。

「……本当にごめんなさい大川さん。
人に八つ当たりするなんて……本当に最低です私……」

しょぼんとした私に、大川さんは側にやってきて私の肩を叩く。

「かおりなら大丈夫!!
バシッと決まるって……僕も多分、その台詞やれって言われたら今のかおりみたいにきっと僕も不安になるだろうから……」

「……えっ!?……今、私の事……名前で……?」

大川さんが私の名前で呼んでくれた事に気付き、私は顔を真っ赤にしてしまう。



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